2021/9/28

【注目】風の力で貨物を運ぶ「帆船輸送」が現代に復活

INDEX
  • 環境にやさしい物流を目指す
  • 80年前の帆船を再利用
  • コロナ禍での物流混乱も解決
  • 「船上の仕事」の甘くない現実
  • 失敗にくじけず可能性に賭ける
  • 大手マースクもグリーン輸送に関心
  • 国単位での取り組みが不可欠

環境にやさしい物流を目指す

雲が渦巻き、風が轟音を立て、打ちつける波が帆船アポロニアの船体を揺らす。
だが、ニューヨーク州を流れるハドソン川を下る航路から、この船が外れることはない。サム・メレット(38)が船長を務めるアポロニア号は、キャッツキルからアーユルヴェーダの調味料を、ハドソンからスペルト小麦粉、麻の軟膏、大麦を、ゲントからウール糸やその他の地元の産品を、約160キロ先のニューヨーク市に運んでいる。
「スタートアップ症候群というやつで、まずはどんな仕事でも引き受けてみて、何がうまくいくか様子を見ようというわけです」ピークスキル付近を航行中の船上から、メレットは電話取材に応えて語った。「今回は、土砂降りの雨の中、ポキプシーの港に約1.6トン分の大麦麦芽を届けましたよ」
いまは、環境破壊に加担するという理由で飛行機に乗ることを恥じ(フライト・シェイミング)、車に乗ることも恥じ(カー・シェイミング)、肉を食べることすら恥ずかしく思う(ミート・シェイミング)時代。
可処分所得のある意識の高い消費者は、自分のカーボンフットプリント(温室効果ガスの排出量)にさらに敏感になり、買い物はなるべく地元でしたいと考えている。生産者は、よりクリーンで環境に優しい包装と配送方法を試みている。
新たに立ち上げた「クリーン・シッピング」事業で、メレットはそういう人々全員の役に立ちたいと考えている。
(Jeenah Moon/The New York Times)