[ニューヨーク 24日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の政策当局者2人は24日、米経済はテーパリング(量的緩和の縮小)開始に十分な状態にあると述べた上で、利上げ開始時期や膨大なバランスシートへの対応など次の主要な議論への移行を促した。

クリーブランド地区連銀のメスター総裁とカンザスシティー地区連銀のジョージ総裁はともにそれぞれの講演で、米経済はFRBが掲げる雇用の最大化と2%の物価目標達成に向けて「実質的な一段の進展」を遂げたと述べた。「実質的な一段の進展」は月額1200億ドルの資産買い入れ額の縮小開始に向けてFRBが設定した基準。

メスター総裁はオハイオ州銀行連盟主催のイベントで、11月の縮小開始、来年前半の終了を支持すると表明。一方、ジョージ総裁はシンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)での講演で「FRBの資産保有を追加し続ける論理的根拠は薄れた」と主張した。

パウエルFRB議長は今週21─22日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、緩和縮小を「近く」開始し、22年央までに完了させることが「適切」になる可能性があると指摘。一方で、利上げに向けたFRBの基準である雇用の最大化とインフレ率の持続的な2%の達成はまだ満たされてないとした。

FRB当局者の半数は22年末までに米経済が利上げに関する基準を満たすと想定。メスター総裁はこの日、22年末までには利上げの条件が整うと予想していると語った。

こうした中、ジョージ総裁はFRBの次の課題として約8.5兆ドルに上るバランスシートへの対応やその金利に対する影響について言及。大量の資産保有による「緩和状態はテーパリングが完了しても持続する」とし、ゼロ金利政策はインフレ率と金融の安定性の双方にリスクがあるとの長年の懸念を示した上で「必要以上に長い低金利は望まない」とした。

さらにバランスシートによる緩和効果が継続することを踏まえると政策金利の適切な水準を見極めるのは難しいと指摘。FRBはバランスシートの規模を維持することで長期金利を低く保ちつつ、短期金利を引き上げることにより緩和効果を相殺すると推測しているものの、そのような場合には長短金利が逆転(逆イールド)するリスクが高まるとし、バランスシートを縮小するか「少なくとも中立的な政策金利を引き下げるとともに満期が短い資産の保有にシフトする」ことが必要だと訴えた。

ジョージ総裁は「経済がパンデミックによる打撃から回復するにつれ、その道筋は通常の状態に戻る上でのわれわれの想定を混乱させる可能性が高い」とした上で、「金融政策の正常化プロセスについても同様で、どちらも困難なプロセスが待ち受けていることを示している」と語った。