[ブリュッセル 16日 ロイター] - 欧州連合(EU)は16日、インド太平洋地域に関する戦略を正式に発表した。中国に対抗して同地域における存在感を高めるとし、台湾と通商交渉を進めるほか、海路の確保に向け船舶の配備を増加させる方針を示した。

前日には、米国、英国、オーストラリアがインド太平洋地域における安全保障上の協力関係構築で合意したと発表。「AUKUS」と呼ばれる協力枠組みの下で、米国と英国はオーストラリアに原子力潜水艦を配備する技術と能力を提供する。

EUの外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は、3カ国の協力枠組みについてEUに事前に相談はなかったとし、EUは独自の防衛・安全保障戦略を策定する必要があるとの認識を表明。ミシェルEU大統領も「戦略的な利害がある地域に対するEU共通の対応の必要性が改めて示された」と述べた。

EUは戦略を巡る文書で「インド太平洋地域における欧州海軍の有意なプレゼンスの重要性を踏まえ、EUは加盟各国の海軍配備の増強を模索する」とした。こうした新戦略の下、EUは今後、インド太平洋地域を巡る問題で外交・安全保障上のプレゼンスを増大させるとみられる。

ボレル上級代表は、特に気候変動などの問題について、中国に対してもオープンであると表明。ただ、外交筋はロイターに対し、EUがインド、日本、オーストラリア、台湾との関係を深化させることの意図は中国の影響力の封じ込めにあるとの見方を示した。中国はEUの第2位の貿易相手国。台湾との通商交渉は中国の神経を逆なでする可能性がある。

ボレル氏はこのほか、EUは安全保障問題で英国と共に取り組む意向を持っているが、英国はEU離脱以降、関心を示していないと述べた。

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