[ワシントン/キャンベラ/ウェリントン 16日 ロイター] - 米国、英国、オーストラリアは、インド太平洋地域における安全保障上の協力関係を構築する。各国の首脳が米国時間15日に開催されたオンラインでの三者会談で発表した。同地域での中国の影響力拡大に対抗するのが狙いとみられる。

この枠組みの下、米国と英国はオーストラリアに原子力潜水艦を配備する技術と能力を提供する。各国首脳は豪州が核兵器を配備することはないが、将来の脅威に備え艦艇に原子力推進システムを用いると強調した。

バイデン米大統領は「われわれはインド太平洋の平和と安定を長期的に確保する必要性を認識している」と表明。「われわれは地域の現在の戦略的環境と、今後のその発展可能性の双方に対処できるようになる必要がある。なぜならわれわれ各国と世界の将来は向こう数十年永続的に繫栄する、自由で開かれたインド太平洋にかかっているためだ」と述べた。

モリソン豪首相は、潜水艦は米英との緊密な協力を通じてアデレードで建造されると述べた。また、核兵器は保有しないと表明。「引き続き、核不拡散の義務を全面的に果たしていく」と語った。

ジョンソン英首相は、豪州がこの技術を獲得することは極めて重要な決断だとし、世界をより安全にするとの認識を示した。

<在米中国大使館が反発>

3カ国首脳は中国を名指ししておらず、発表に先立って記者団にブリーフィングを行った米政権高官も、今回の協力関係は中国への対抗を目指したものではないとしている。

ただ、在米中国大使館は「(各国は)第三者の利益を対象としたり、損なったりする排他的なブロックを構築すべきではない」と反発。「特に、彼らは冷戦思考とイデオロギーに関する偏見から抜け出すべきだ」とした。

米国の元国家情報長官、ジェームズ・クラッパー氏はCNNに対し、豪州経済が中国に依存していることを考慮すれば豪州は大胆な決断をしたと指摘。「中国側は間違いなくこれを挑発的と見なすだろう」と付け加えた。

発表に先立ってブリーフィングを行った米当局者によると、バイデン大統領は9日の中国の習近平国家主席との電話会談で今回の協力関係については「いかなる具体的な言葉でも」言及しなかったが、「インド太平洋で力強い役割を果たすわれわれの決意を強調」したという。

米政府当局者は、今回の協力関係構築について、豪州への核兵器提供を伴うものではないと強調した。潜水艦に核兵器は搭載されないが、オーストラリア海軍がより静かに、より長く活動できるようになり、インド太平洋での抑止力の高まりにつながるという。

また、「AUKUS」と呼ばれる今回のパートナーシップはAI(人工知能)や量子技術などの分野での協力も含まれるという。

バイデン大統領は、各国政府は「労働力から訓練要件、生産スケジュールまで、このプログラムのあらゆる要素を決め」、不拡散コミットメントの全面順守を確実にするため、18カ月の調査期間に入ると表明した。

英国によると、最初の潜水艦をできるだけ早期に引き渡すことを目指し、18カ月の間にどの国や企業が何をするのか詳細を練るという。

米当局者は豪州が原子力潜水艦をいつ配備するのか、何隻建造されるのかについては明らかにしなかった。ただ、豪州が原子力インフラを何ら保有していないため、数年にわたる持続的な努力が必要になると述べた。

一方、豪州は16日、原潜8隻の開発を目指すと表明した。

<NZは原潜の領海入り認めず>

ニュージーランド(NZ)のアーダーン首相は16日の記者会見で、長年にわたる自国の非核政策により、オーストラリアの原潜が自国の領海に入ることは認められないと述べた。

米英豪の新安保協力についてモリソン首相と昨夜話したことを明らかにした上で、「密接に協力するパートナー国がわれわれの地域に目を転じたことは喜ばしい」としつつ、1984年の非核ゾーン政策の下、NZ領海内で原潜は認められないとした。

また、NZが米、英、カナダ、豪州と構成する、安全保障上の機密情報を共有する5カ国「ファイブアイズ」や、防衛問題での豪との密接なパートナーシップを含む既存の関係は変わらないと述べた。

中国はNZにとって最大の貿易相手。