2021/9/17

【佐宗邦威】クリエイターじゃない人こそ、デザイン思考を学ぶべき理由

NewsPicks 映像事業 ディレクター
2021年、ビジネスパーソンにはどんなスキルが求められているのか。
プレゼンスキルや論理的思考力、マネジメント力......。
中でも「デザイン思考」の習得について考えたことがある人はどれくらいいるだろうか?
今回リリースされた新作MOOCでは、戦略デザインファーム BIOTOPE代表の佐宗邦威氏が登場し、米デザインスクール留学やP&G、SONYでの経験をもとに、ビジネスパーソンがデザイン思考を実践できるよう基礎から解説する。
デザイン思考と聞いて「自分はクリエイターではないから、うまく身につけることができない」と敬遠してしまうのはもったいない。
営業、事業開発、コンサルタント、カスタマーサクセスなど、全てのビジネスパーソンが今日から学びたい「課題を創造的に解決するための」思考法だ。

なぜ今デザイン思考? 時代の変化に注目

今、「デザイン思考」が企業の現場において必要とされている。その理由として、企業が、「ヒエラルキー型組織」から「ネットワークを価値にした組織」に変わっていることと関係があると佐宗氏はいう。
組織は以下のように変化を遂げた。
オープン、コミュニティ、共感、イノベーション。そんな風に「はじめからネットワークでつながってしまった時代」である21世紀、組織は「求心力と創発力」を両立させていく形へと変貌しようとしている。
そしてビジネスモデルにも変化が訪れている。
20世紀までは「競合が『まだ』出していない商品」を作り、今までになかったニーズを見つけることが重視されていた。ビジネスにおける戦略と定義に企業の注目が集まっていたのだ。
一方で、現代は企業や人のWHY(ミッション・ビジョン)があるところに、ユーザーが集まる。21世紀は時に競合相手にすら共感し、パートナーになることもあるように、社内外の人と「一緒に」価値を創り出していくことが、ポイントになっている。
「価値共創型の場」を作ることによって、最終的にはその場やコミュニティが「価値」となり、文化を生み出すのだ。
例えば昨今、多くの企業の中期経営計画に記載されているDX。社外のパートナーと共創し、新しい価値を生み続けなければと、DX推進の際にデザイン思考を取り入れたい企業が増えているそうだ。

押さえておきたい。5つのフレームワーク

そんな21世紀型の組織とビジネスに有効なのが、スタンフォードデザインスクールが提唱している、デザイン思考のフレームワークだ。5つのステップに分かれており、一般的なデザイン思考のプロセスとして知られている。
その5つのステップについて見ていこう。
1つ目が「共感(Empathize)」。生活者の気持ちに徹底的に共感することが重要だ。
生活者に充分に共感できたら、2つ目のステップである「ディファイン(Define)」に移る。これは課題定義ともいい、生活者の課題を明確にすることが目的だ。
3つ目が「アイディエーション(Ideate)」。新しい価値を発想し生み出す「アイデア発想」である。そして4つ目である「プロトタイピング(Prototype)」のステップで、これまで考えてきたものを「手を動かして」形にする。
最後に5つ目である「テスト(Test)」で、検証を行う。自らが考えついたアイデアやプロトタイプをユーザーに試してもらい、どんな反応があるのか、また、どう改善すべきかを考えていく。
このような5つのステップが、デザイン思考のプロセスの要諦だ。
ここで誤解してはいけないのは、デザイン思考はデザイナーやクリエイターだけのものではないということだ。

デザインの本当の意味を知っているか

そもそも、デザインはアルファベットで書く「Design」とカタカナで書く「デザイン」はそれぞれ意味が違う。
「Design」は「設計する」という意味を持つ。存在しないものを構想し、それをどういう風にして形にしていくのか、全体像を考えることだ。
一方で日本語の「デザイン」には「意匠」、工夫を凝らすという意味がある。自分たちが作った商品やサービスの形、世界観を見える化することである。
デザイン思考を世の中に広げたのは、アメリカのカリフォルニア州に本拠を置く、世界的デザインコンサルティング会社「IDEO(アイデオ)」だ。
CEOのティム・ブラウンが提唱しているデザイン思考の定義は以下の通りだ。
佐宗氏はティム・ブラウンの定義をさらに噛み砕き、「異分野横断のチーム」で共創し、ユーザーの課題を創造的に解決することがデザイン思考であると説く。
なぜそう定義できるのか。デザイン思考で最も理解するべきデザイン思考の本質について、佐宗氏のMOOC Episode1で確認したい。
さらに、Episode2から4にかけて「デザイン思考の3要素」について語られている。特にEpisode3の、佐宗氏の留学経験を交えた解説から始まる「プロトタイピングの方法」にも、注目だ。
佐宗邦威(さそう・くにたけ)株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer
東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科(Master of Design Methods)修士課程修了。P&Gにて、ファブリーズ、レノアなどのヒット商品のマーケティングを手がけた後、ジレットのブランドマネージャーを務めた。ヒューマンバリュー社を経て、ソニー株式会社クリエイティブセンター全社の新規事業創出プログラム(Sony Seed Acceleration Program)の立ち上げなどに携わった後、独立。BtoC消費財のブランドデザインや、ハイテクR&Dのコンセプトデザイン、サービスデザインプロジェクトを得意としている。著書に、『デザイン思考の授業』(日経BP 2020年)、『ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION』(日経BP 2019年)、『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN 』(ダイヤモンド社 2019年)、『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』(クロスメディア・パブリッシング 2015年)。多摩美術大学特任准教授。大学院大学至善館特任准教授。