火星の岩石に水の痕跡 生命存在した可能性高まる NASA
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過去の火星の地表に液体の水が存在したことに関しては、これまでの探査で動かぬ証拠が積み上がっていました。水の中でしか生成しないミネラルや岩石が見つかっているからです。例えば2004年に火星ローバー・オポチュニティは小さな球状の赤鉄鉱を発見しました。赤鉄鉱では地球上では水の存在下で生成することが知られています。(ちなみにこれ、「火星のブルーベリー」と呼ばれています。)過去のローバーが発見した地質学的、鉱物学的証拠の数はおびただしく、水の「存在」に関してはもはや願望や仮設の域ではなく科学的事実です。
いまだにわかっていないのは、地表の水が①どれだけの期間、②どれだけの量存在したか、です。もしかしたら過去の火星には地球のように海が存在し、しかもそれが数億年にわたって持続したかもしれません。ならばもしかしてそこに生命が生まれたかもしれません。Wet Mars hypothesisと呼ばれています。もっと悲観的な仮説も多くあります。例えばcold and wet hypothesisと呼ばれるもので、火星は基本的には全球凍結した氷の塊だったが、局所的・一時的に暖かった場所・時間のみ氷が溶けて液体の水が流れた、とする仮説です。いづれの仮説も、現状の観測結果と齟齬はありません。つまり、どの仮説が正しいか絞り込むには、さらなる観測が必要です。
さて、以上が前置き。今回のパーサヴィアランスの着陸地点は、オービターからの観測で、過去に湖だったと考えられるクレーターの底です。言わずもがな、水が存在した証拠があることが、この地点が選ばれた理由です。ですから水の存在がわかったこと自体は、全く驚きではありません。
問題は、このクレーターがどの程度の期間水で満たされていたか、です。オービターの観測でそれが比較的長期間であったことは示唆されていました。実際に現地の岩を観測し、それを裏付ける証拠が見つかった、というのがこの記事のニュースです。
記事タイトルは少し誤解があるかもしれません。今回の発見はこのクレーターにおける局所的なhabitability(生命の居住可能性)の問題で、火星に生命が存在したかどうかの可能性を大きく左右するものではないでしょう。「仮に過去の火星に生命が存在したならば、その証拠がこの場所で見つかる可能性が高まった」、というのが正確な解釈だと思います。これまでも水があった「可能性」を示す証拠は出てきているが、決定的な証拠はない。まあ、「そうであってほしい」という願望というかバイアスがあるような気がしないでもない。