2021/8/13

ロンブー淳ら著名芸能人が中小企業を全面支援。仕掛け人が語る「舞台裏」

NewsPicks, Inc. Brand Design Editor
国内企業数の99.7%、雇用者数の約7割を占め、日本経済を支える中小企業が、コロナ禍の影響を受けてこれまで以上に厳しい経営に直面している。
そんななか、今年1月に発足したのが中小企業から日本経済の活性化を目指す「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」だ。
第1期ではロンドンブーツ1号2号の田村淳さんをアンバサダーとして迎え、タレントを活用した企業の発信力・PR力の強化や社員のモチベーション向上を含めた全方位的な支援を行った。
今年7月には、約150社の中小企業とともに、第2期が始動。タレントのウエンツ瑛士さん・女優の前田敦子さんを、新たに公式アンバサダーとして迎え、プロジェクトのスケールアップを図る。
プロジェクトの仕掛け人は、採用支援事業を運営する株式会社リアステージの取締役COO・山下佳介氏(※)なぜHR事業を展開してきた同社が、本プロジェクトを始動させたのか。山下氏が目の当たりにした中小企業の危機とは何か。プロジェクトの「舞台裏」を聞いた。
2021年6月に本事業を分社化し、現在は株式会社中小企業のチカラ(代表取締役 山下佳介)で運営。

コロナ禍の中小企業の課題

──なぜ採用支援事業を運営してきたリアステージが、中小企業向けのプロジェクトを発足させることになったのでしょうか。
山下 これまで私たちは、新卒・中途・フリーランスエンジニア向けの人材紹介事業を展開することで成長してきました。なかでも特に新卒採用に注力しており、サービス開始より6期目に累計登録者数20万人、導入企業数1000社を突破するまでになっています。
 しかしコロナ禍の影響を受け、顧客の中心である中小企業が大打撃を受けた。経営難に陥る企業は瞬く間に増え、活況だった採用市場は一気に冷え込みました。
 1000社以上あった求人も、一気に250社ほどにまで減り、750社もの中小企業が採用をストップするほどの厳しい現実を突きつけられました。
 そんななかで、既存のクライアントから採用以外の悩みを相談いただく機会も増えていったのが、大きなきっかけです。
中学卒業後、15歳で陸上自衛隊に入隊。パルスレーダー整備士として5年間勤務。20歳の時に、大学進学を決意し退職。卒業後、エン・ジャパン株式会社に入社。新卒採用支援事業部で企業ビジョン実現に向けた新卒採用の提案に従事する。2014年、株式会社リアステージ立ち上げに参画。今年1月に「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」を立ち上げ、中小企業から日本経済の活性化を目指す。
──中小企業には、どんな悩みがありましたか。
 目先の働く環境の整備や資金繰りなどさまざまな課題はもちろんですが、悩みとして多かったのが、営業・販売力や人材採用・育成についてです。
 例えばこれまでは労働集約的にテレアポを行なってきたものの、リモートワークが普及したことで従来の手法が通用しない。目先の売り上げの確保が必要な状況なのに、人も採用できないなどです。
 また、中小企業はそもそも企業やサービスの認知度が低いため、商品を売るにも、採用するにも土俵にすら上がれないという声もありました。加えて、プロモーションに必要な資金もノウハウも十分にない。
 これらの課題は以前からありましたが、より深刻な悩みとなっていました。
 中小企業は、人材や資金力、知名度など、大企業と比較してあらゆる経営リソースが不足しています。これらを企業の努力不足と一言で片付けることができれば簡単ですが、コロナ禍の苦境を自力で抜け出すには限界があります。
 リアステージも中小企業として同じ道を辿ってきました。その苦労はよくわかりましたし、何より独自の技術やサービスを持つ中小企業の可能性を諦めたくありませんでした。
 それに私たちを長く支えていただいた中小企業の危機を目の当たりにして、ただ見ているわけにはいかない。これまで採用支援を行なってきた私たちにも、なんとか力になれることはないのか。
 こうした思いを起点に、事業領域の拡大に踏み切りました。そして発足したのが、タレントを活用したPRを軸に営業や販促力強化などの全方位的な支援をする「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」です。

タレントの肖像権を活用したPR戦略

──どのようなソリューションを提供するのですか。
 ソリューションとしては、3つの柱があります。
 1つは「広告宣伝支援」です。
 まずは認知や信頼を得ることが必要だと考え、アンバサダーとして協力してくれているタレントの肖像使用の権利を提供しています。
 初代アンバサダーは、中小企業を元気にしたいというコンセプトに共感いただいた田村淳さんに就任いただきました。第2期は、田村淳さんに加えて、前田敦子さん、ウエンツ瑛士さんにも就任していただきました。
実際に使用できる肖像の一例
 タレントの肖像使用は当然それなりの予算が必要となります。しかし中小企業が複数集まることで一社あたりのコストを下げ、予算のハードルをクリアできました。
 知名度のあるタレントの画像をホームページや広告などに利用してもらうことで、営業・販促活動をバックアップすることを目指します。
 2つめは、「情報発信・PR支援」です。
 中小企業が目を向けられるきっかけをつくるため、情報発信の場やPR機会自体を創出することです。例えばメディア向けのイベントなどを定期的に開催することで支援します。
 3つめが「社員のモチベーション支援」です。
 参画企業の日頃の努力や実績を表彰し、アワードとしてイベントで開催することで、モチベーション向上や企業ブランディングにつなげるというものです。
 今年の6月に「第1回 日本中小企業大賞」を開催しましたが、中小企業同士の横のつながりも生まれ、実際モチベーションの向上にもつながったという声を聞きました。
 また田村さんのようなタレントが自社の事業を応援してくれているということ自体が、中小企業の社員や家族にとっても励みになります。
 プロジェクトに参加した中小企業は第1期が48社、第2期が約150社となりました。1期が成功したことで、2期の裾野が広がっています。

幾多の商談から見えた中小企業のリアル

──実際、中小企業からの問い合わせはどれくらいありましたか。
 6月までの半年間で、私自身が約1000もの商談を行なってきました。毎日、さまざまな中小企業の方とお話しするうちに、彼らの思いや抱えている課題の解像度が高くなっているのを感じます。
──月に約170商談のペースになりますね。
 はい。決して大袈裟ではなく、1日に10社以上の商談をこなす毎日でした。「コロナで本当に打撃を受けています。助けてください」というような切実な声もある一方で、最近では、より前向きな目的でプロジェクトの活用を検討いただくケースが増えています。
 例えばコロナ禍で既存事業が落ち込んだため、新規事業開発に注力する企業は増えました。事業転換を広く知らしめる手段として、このプロジェクトを活用して一気にスタートダッシュさせたいという声などです。
 むしろ、ただ単に「タレントを使うコストを抑えられるから」という理由だけで、興味を持っていただいた企業は少なかったです。
 「中小企業を元気にしたいというプロジェクトの思いに共感した」という声が多く、その期待にしっかりと応えていきたいという気持ちは、2期を迎えて一層強くなっています。
第一期は全48社の中小企業が参画した
 元々、これまで採用支援を行なってきた立場としても、プロモーションに予算を割ける大手企業ばかりが採用強者になってしまうことに思い悩むことがありました。
 例えば「名前を知っているから」「CMでよく見るから」という理由で、大手企業を志望する就活生はまだ少なくありません。
 もちろんそれ自体も一つの動機だと思いますが、視野を広げるために中小企業の求人を紹介してみることがあります。すると、独自の中小企業の技術やサービスに魅力を感じて、大手企業以外の選択肢を視野に入れ始める学生もいます。
 ほかにも、「両親がその会社を知らないから」という、いわゆる親ブロックで大企業を志望するケースも多い。日本の未来を担う若い人たちが、そんな理由で道に迷ってしまうことも現実なのです。

中小企業の「登竜門」に

──参加企業が増える中で、これからどんな企業を支援していきますか。
 業界や事業を限定することはありませんが、「挑戦」を応援していきたい。目指すのは、中小企業の成長のアクセルとなる「登竜門」のような存在です。
 一流タレントの持つ影響力を事業拡大に活用してもらう。事業が成長して卒業していく会社が増えていくのも、一つの理想です。
 成功事例が増えれば、後に続いて挑戦する企業も増えていくはずです。このプロジェクトを通じて、中小企業がつながり、活性化するサイクルを生み出していきたい。
 私たちだけで中小企業から日本を元気にするというミッションを目指すには限界があります。プロジェクトに共感してくれた中小企業が1000社、1万社と増えていくことが、日本を元気にすることにつながるのではと考えています。
 私たちの挑戦はまだ始まったばかりで、日々試行錯誤の連続です。すでに参画企業のみなさまから喜びの声をいただいていますが、その一方で多くのアドバイスもいただきました。
 これからも中小企業のみなさまの声を大切にしつつ、より新しいことに挑戦できるようプロジェクトもどんどん進化させていきたい。中小企業からニッポンを元気にしていく、私たちが目指す未来に向けてこれからも邁進していきます。

プロジェクトの想いに共感

今年1月に始動した「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」。第1期の締めくくりとして、中小企業の事業や取り組みにスポットを当てる「第1回 日本中小企業大賞」が6月29日に開催された。

MVP賞(全エントリー企業の中で、総合的に最も目覚ましい活躍した企業)を獲得した就活サイト「CheerCareer」を展開する株式会社Cheer代表取締役 平塚ひかるさんの受賞コメントとともに、アンバサダーの田村淳さんのメッセージをお届けする。
受賞コメント 
株式会社Cheer 代表取締役 平塚ひかるさん
設立1年未満のスタートアップに、栄誉ある賞をいただき光栄です。中小企業から日本経済を盛り上げていく想いに賛同し、本プロジェクトに参画しました。その中で、参画企業のみなさまのコロナに負けない取り組みを目の当たりにし、日々の自分たちの活動源につなげることができました。

また中小企業で働く上で、すごい活躍しているのにスポットライトが当たりにくい社員のモチベーションにつながる結果にもなり、我々自身が物凄いエネルギーをいただく機会となりました。この賞の名に恥じぬよう、今後も「働くにワクワクする世界を広げる」というミッションを成功させるため邁進していきます。
田村淳さんからのメッセージ