[ソウル 28日 ロイター] - 韓国と北朝鮮は関係修復に向け、北朝鮮が昨年爆破した南北共同連絡事務所を再び開設し、首脳会談を開く方向で協議を行っている。韓国政府筋が明らかにした。

同筋によると、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は4月以降、複数回にわたり親書を交換して関係改善の道筋を模索してきた。

両国は27日、北朝鮮が2020年6月に遮断したホットライン(直通電話回線)を再開したと発表していた。

2人の関係筋によると、両国は南北軍事境界線のある板門店に共同連絡事務所を開設する方向で協議を行っている。北朝鮮は昨年、軍事境界線に近い開城(ケソン)にあった共同連絡事務所を爆破した。

双方は、文大統領と金正恩氏の会談も目指しているが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなか、時期などの詳細は話し合われていないという。

北朝鮮は国内のコロナ感染を1人も確認していないが、国境を封鎖し、厳格な感染予防措置を実施している。

関係筋の1人は「協議はまだ進行しており、コロナ感染症が最大の決定要因となるはずだ」と指摘。「対面会談が最も好ましいが、状況が改善することを願いたい」と続けた。

韓国大統領府の報道官は27日、連絡事務所再開が協議されるとの見通しを示したほか、両首脳はまだ会談に関するいかなる提案も行っていないと述べていた。

2人目の関係筋は、北朝鮮がコロナを理由に対面会談に難色を示した場合、テレビ会談が選択肢になり得ると指摘した。テレビ会談が「北朝鮮にとって可能で、実現できれば状況は大きく変わり、米国との協議再開につながるようなさまざまな好機がもたらされるだろう」と語った。

<「率直な」書簡>

最初の関係者によると、文大統領と金正恩氏が10回以上にわたって「率直な」書簡を交わしたことによって、韓国の情報当局と金氏の妹である金与正氏の間で対話のチャネルが開かれた。

同筋はバイデン米大統領が北朝鮮の人権問題担当特使の指名を控えるなど現実的なアプローチを取っていることから、金正恩氏は米国による対話の呼び掛けに応じる意向との見方を示した。

「(米国は)一括合意ではなく段階的なアプローチを模索し、人権問題特使ではなく核交渉担当者を任命するなど目に見える要素もあった」と述べ「米政府は(北朝鮮)政策を発表しており、北朝鮮も座視しているわけにはいかないため、南北関係が出発点になった」と分析した。

ソウルの米国大使館はコメントを控えた。米国務省はコメントの要請に応じていない。

3人目の関係者は韓国と北朝鮮がホットラインの再開しか発表していないのは、北朝鮮が連絡事務所の爆破についてどう謝罪するかなど、他の問題でほとんど進展がないからだと指摘した。