[東京 21日 ロイター] - 日銀が21に公表した6月金融政策決定会合の議事要旨によると、民間金融機関の気候変動対応投融資を支援する新たな資金供給制度(気候変動対応オペ)を創設するに当たり何人かの委員は、日銀の使命に則していること、ミクロの資源配分への介入は避けることが重要との認識を示していた。ある委員からは、気候変動の影響についての議論が尽くされていないことから、政策の具体化には慎重を期す必要があるとの意見も出た。

会合では、何人かの委員が、気候変動問題は中長期的に経済・物価・金融情勢に極めて大きな影響を及ぼし得るため、中銀の使命にも関係するとの認識を示した。各国中銀が対応を検討している中、多くの委員が、日銀としてもどのような貢献ができるか検討し、方向性を示す局面に来ていると指摘した。

複数の委員は、中銀が民間の気候変動対応を金融面で支援することは、長い目でみた時にマクロ経済や物価の安定に資するものであり、金融政策の理念と整合するとの見方を示した。委員の1人は、新たなイノベーションの機会を通じて潜在成長率の引き上げに寄与する可能性があると述べた。

一方、ある委員は、気候変動問題に対する民間部門の取り組みや経済・物価への影響については議論が尽くされていない点も多いため、「政策を具体化する際には慎重に行う必要がある」との見解を示した。

市場中立性への配慮については、何人かの委員から、日銀自身が個別の企業や事業がグリーンかどうかを判断することは、ミクロの資源配分に直接的に関与することになるため、できるだけ回避すべきとの認識が示された。このうちの1人の委員は、ミクロの資源配分にまで踏み込んで気候関連政策を行うことは、基本的には政府・国会の役割だと指摘した。

日銀が6月17─18日に開催した金融政策決定では、金融機関が自らの判断に基づいて取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給制度の創設を決定。新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの期限を来年3月まで延長することも決めた。同会合が審議委員として最後となる政井貴子氏は、決定の公表文の採決を棄権した。

(杉山健太郎 編集:田中志保)