山口貴也 木原麗花

[東京 16日 ロイター] - 財務省は、世界的に議論が進むデジタル通貨への取り組みを加速するため、体制を強化する検討に入った。通貨を管理する理財局国庫課の人員を増やすことを念頭に、近く正式に予算要求する。金融庁では市場企画局に「デジタル・分散型金融企画室」を8日付で新設した。新たな陣容でデジタル通貨に関する協議に弾みをつける狙いだ。

複数の政府筋が明らかにした。財務省と金融庁は、日銀が今春設置した「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」に参加。デジタル通貨を巡って全国銀行協会などの関連団体とも協議を重ねているが、専門の担当官を新たに拡充する必要があると判断した。

人選などの具体策は今後詰める。財務省からのコメントは得られていない。金融庁の関係者は「ポストを新設したのは事実だが、何を議論していくかは現時点で決まっていない」と述べた。

日米欧などの主要7カ国(G7)は6月の財務相・中央銀行総裁会議で、デジタル通貨に関し、法律や規制、監視面で「十分に対処されるまではサービスを開始すべきではない」とする共同声明を採択した。

一方、G7各国は「大きな利益をもたらし得る」との認識では一致しており、欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で、デジタル通貨導入に向けた本格的な調査を始めることを決めた。調査期間は2年間で、早ければ2026年にもデジタルユーロを発行する可能性がある。

日本を含め、米中でも調査や実証実験が進められ、サイバーセキュリティーやプライバシー、資金洗浄、金融政策への影響など残る課題をどうクリアするかが焦点となる。デジタル通貨には暗号資産やステーブルコインに加え、中銀が発行する中央銀行デジタル通貨(CBDC)がある。

<CBDC巡る協議加速>

日銀は、21年4月からCBDCに関する実証実験を開始した。CBDCの基本的な機能を検証する「概念実証フェーズ1」を手始めに、周辺機能を検証する「概念実証フェーズ2」を経て、必要と判断すれば、民間事業者や消費者が参加する形でのパイロット実験を行うことも視野に入れた3段階での実証実験を想定している。

今のところはフェーズ1の検討段階だが、来年度中には次のステップに移行する見通しで、制度設計をどうするかの最終協議に向け、検証を加速させる。

(山口貴也、木原麗花 編集:久保信博)