2021/7/26

パフォーマンスを発揮する近道は、仕事への没頭

NewsPicks ブランドデザイン シニアエディター
 現代のビジネスパーソンは、アスリートのように集中力を求められている。
 ビジネスを進めていく上で生産性・創造力を発揮するために、パフォーマンスの最大化をどのように図るのか、気になる読者も多いだろう。
 思考を研ぎ澄ませ、仕事へ没頭するためには何が必要なのか。
 京都大学学内入居ベンチャー第一号としてロボ・ガレージを創業。国際的なロボット競技大会であるロボカップ世界大会において5年連続優勝を達成。数々のギネス世界記録を保持するロボットクリエイター高橋智隆氏。
 仕事に没頭しているときは食事も面倒だと言う氏に、ビジネスパフォーマンスを発揮するための秘訣を聞いた。

ロボット普及の壁とは

──高橋さんはロボットクリエイターとして活動されています。ロボット開発の難しさはどこにあるでしょうか?
高橋 ロボットが普及しないことには、技術的にも発展していかない、というジレンマがあります。例えば、スマートフォンでも、シェアの高い端末は周辺機器が充実し、結果的に更に売れる。
 また、電気自動車(EV)は工学的には圧倒的なメリットがあるのに、充電スタンドの整備や消費者心理などから普及が進まず、過渡的な技術であったはずのハイブリッド車の全盛が長く続いてきました。
 これはテクノロジー全般に言えるのですが、技術的に良い物を作っても社会に受け入れられるわけではないので、うまく消費者を導いていく必要があるのです。
 だから、既に社会に深く浸透しているコミュニケーション端末「スマートフォン」の延長線上にコミュニケーションロボットの市場があり、ロボットこそが「スマホの未来」となり得るのです。
──ロボットを消費者へ届けるために必要なことはなんでしょうか?
 アップルのiPhoneは既存技術の寄せ集めで、スティーブ・ジョブズはペテン師だと言われていた時がありました。
 それまでiモード、Palm、BlackBerryという先駆者が超えられなかったものをiPhoneは超えてきた。
 テクノロジーにおける最大の壁は、普及させるための技術・戦略・体力なのです。その壁を越えられたら、世の中のアイデア・人材・資金といったリソースが自動的に集まってくる。
 iPhoneが世界的なプラットフォームに到達したことで、アプリやサービスが次々と生まれ、良い方向に転がり始めたのです。
──具体的に高橋さんはどの範囲までビジネスにかかわるのでしょうか。
 僕はハードウェアが専門の人間ですが、ロボットの企画、設計、デザインからはじまり、実際に部品を削り、配線をし、プログラミングして試作機を作る。もちろんビジネススキームも整える。世の中へロボットを届けるために必要なことをすべてやっています。
 無邪気に「ロボットのためのロボット開発」をしていてもすぐに頓挫してしまうので、それぞれの細かい研究開発に注力しつつも、自ら全体的な戦略を練って実行する必要があるのです。
──ロボットの開発者である高橋さんが、そこまでコミットするんですね。「0→1」(ゼロイチ)どころではないというか。
 そうですね。「0→100」(ゼロヒャク)です。
 必要に迫られて、という側面はありますが、結果、世界中の人にロボットを届けられたら最高だと思っています。だから、上流から下流まで、やらないといけないことを自ら切り拓いていきます。
 種を植えて、芽を出して、育てて果実を実らせたら自分で食べるイメージです。これまで述べてきたように、種を植えただけでは実りに到達できないので、後世の礎にもなれず無駄死にになりかねません。
──なぜロボットが、「スマホの未来」なのでしょうか?
 ヒューマノイドロボットって人気ですよね。
 でも、ロボットが人型であるメリットって、あまりないと思いませんか。
──そう言われてみれば。
 安定性やエネルギー効率を考えれば、二足歩行の必然性もない。
 一方でスマホなどの音声アシスタントは、ユーザーと信頼関係が築けていない。
──ロボットは信頼関係が築ける?
 実はロボットもスマホの音声アシスタントとほとんど同じ仕組みで動いています。今のロボットはインターネットに繋がり、音声認識をクラウドでやっている。
 何が言いたいかというと、スマホのような画面だけのものでは、筐体自体に何の愛着も持てない。でも、ロボットはそれ自体が擬人化されることで信頼感を得ることができる。
 ゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじや、ピノキオのコオロギ君、魔女の宅急便の黒猫ジジなどに近いです。小さくて物知りな相棒が、情報の力で主人公を助けてくれるイメージです。
 日常的な会話と、役に立つ情報提供。その両方を担うのが、1人1台持ち歩くロボットの役割です。
 そしてやがて「体験の共有」が大きな価値になってくる。
──体験の共有ですか?
 たとえば、去年の今頃は旅行に行ったよね。あの日の夕日は綺麗だったね、というのが一緒にいるロボットとの共有体験となる。
電話も出来るロボット「ロボホン」を手に取る高橋氏
 それこそロボットと50年間一緒にいたら、50年分の経験を共有することになります。人生を共有してきたパートナー的な存在意義が生まれる。
 長く連れ添うパートナーや、若い時から乗り続けてきた愛車にも、そんな「体験の共有」が起きますよね。
 ロボットも、道具でもない、ペットでもない、「相棒」になるんです

仕事に没頭するとトイレに行く時間がもったいない

──コロナでビジネスに影響は出ましたか?
 今は足止めを食らっている状況ですね。
 ロボット開発はスマホのサプライチェーンの中に入っていかないと仕事になりません。
 巨大なスマートフォン市場によって、抜群に品質がいい部品が、超低コストで、100万個単位の量で作られるようになりました。
 ロボット専用に、1000台分の部品を作ろうと努力しても、超高性能で格安なスマホ用部品には敵わない。
 だから、スマートフォンの技術や部品・サービスなどを応用するために、スマホの開発・製造現場である深圳やシリコンバレーに行く必要があるんですが、今は海外出張が難しい。
──他方で研究する時間が増えた?
 そうですね。無駄な会議や移動の時間から解放されて効率は上がったように思います。一人でじっくり物事を考える時間もできました。
 ただ、私は根はぐうたらで、もともと仕事はノっている時にやりたいタイプです。ノリ始めたら何からも邪魔されたくないから、研究室にこもることは多いです。
──仕事に集中するときはどんなスタイルですか。
 夜中まで制作を続けて、なんらかの進展はあっても、気になる部分があれば作り直してしまう。
 そのまま朝までやってみて、限界まで疲れたら倒れ込んで寝るという感じです。
 ただ、朝まで働いていると、うっかりミスも多くなる。「右足が2本できちゃった」みたいな(笑)。
 働き方改革が謳われる中、人にはおすすめできませんけれど、私の場合は自由なので。
──パフォーマンスを落とさないためにしていることはありますか。
 研究開発は調子が良いタイミングに、自分の能力・体力の限りやり続けたほうがいいと思っています。そんな自分のパフォーマンスを最大限引き出すためにはどうすればいいか、今も試行錯誤しています。
 ロボットは形にしないと目に見えてこないことばかりなので、とにかく手を動かして作ってみることの積み重ねです。
 作ってみて初めて、強度が足りないとか見た目が気に入らないといった発見があり、設計やデザインの課題が見えてくる。三歩進んで二歩下がるの繰り返し。
高橋氏の東京大学内研究室
 仕事に没頭している時は、ご飯もトイレも面倒くさい。口にした栄養が100%吸収されたらいいのにと思います。
──100%吸収ですか?
 だって、残りカスを排泄するなんて無駄だと思いませんか。すべて吸収できればトイレにだって行かなくて済む。
──なるほど(笑)。ロボットクリエイターならではの考えという感じがします。とにかく、没頭しているときは手と思考を止めたくないんですね。
 でも、意外にもトイレや風呂でアイデアが思いつくんですよね。
 仕事をやり続けているとそのうち本質が見えなくなってしまうから、一瞬だけ仕事から離れてみて、課題を違う角度から見るというのは絶対に大事です。
 入試だってトイレ休憩を許可したら、難問を解ける気がしてきませんか?
──確かにそうかもしれません。深く思考を巡らせるのが大事ということですね。
 ええ。なので、極度の集中と弛緩。その間は関係のないことは極力排除するようにしています。
──食事で気を遣っていることはありますか?
 仕事の邪魔にならないこと。研究開発中、時間がなくて栄養が気になるときはブロックタイプのカロリーメイトを食べます。同じ物をずっと食べられる人間なので、味がシンプルで飽きないのがいいんです。
 頭を使いすぎると脳が糖分を欲しはじめるので、やはり栄養補給は重要だなと感じます。ほんとうはドラゴンボールの仙豆*があればベストなんですけどね。
*漫画『ドラゴンボール』に登場する架空の豆。1粒食べると10日は何も食べなくてもよいとされる
──仙豆懐かしいですね。あそこまでコンパクトではないですが、栄養配分などを考えるとカロリーメイトも使い勝手はよさそうです。
 必需品ですね。車の小物入れにはいつも必ずカロリーメイトブロックタイプが入っています。箱型だから、形が崩れないし、コンパクトなサイズ感もいい。
 僕は素材フェチなんですが、素材の耐久性が気になるんです。ロボットを作る身としては、作ったものがダメになっていくのはやはり悲しい。
 カロリーメイトって耐久性がありますよね。
──非常食にも用いられています。耐久性といえば、缶に入ったリキッドタイプのカロリーメイトリキッドはご存じですか。
 いえ初めて見ました。
 ドロドロしたものをイメージしていましたが、酸味もあって飲みやすい。
 ブロックタイプとはまた違い、飲料だと眠くならないのがいいですね。
──5大栄養素がバランスよく含まれていて、タンパク質が10g入っているのが特長です。
 手軽に栄養を摂れるのはいいですね。
 ただ、飲み終わった空缶の処分が面倒なので、水道の蛇口から直接カロリーメイトリキッドが出てくると良いのですが(笑)。
*1 ビタミンA・B1・B2・B6・B12・ナイアシン、パントテン酸、葉酸、C・D・E
*2 ナトリウム、カルシウム、鉄、マグネシウム、リン
*3 「栄養素等表示基準値」より
カロリーメイト誕生秘話を参考にNewsPicks Brand Designが作成
──最後に、高橋さんの働き方を一言で教えてください。
 バリバリ働いてバリバリ遊ぶ。アドレナリンが出続けている生活が理想ですね。
 それが一番健全だと思っています。