【軌跡】好調ロレアルが仕掛けた「全従業員DX化計画」
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「不況知らず」ーそんな枕詞をつけて語られるほど、化粧品業界は長い間、景気に左右されにくい、安定した業界として知られていました。
しかしながら、新型コロナウイルスのパンデミックは、そんな“通説”を吹き飛ばし、国内外の化粧品業界に影を落としています。
大きな要因となったのは、デパートやドラッグストアを含めたリアル店舗の閉鎖です。多くの消費者がオンラインに移動し、市場のデジタル化が一気に促進されました。
国内の化粧品市場は伝統的に、店頭での対面販売を中心に発展してきました。そのため、各企業もデジタル技術の活用が遅れており、急激な変化への対応に苦戦する姿もあります。
一方で、デジタルを強みとし、いち早く業績回復を果たした企業があります。ラグジュアリーの老舗企業ロレアルです。
遡ること10年以上前から、“デジタル”をグループ戦略の最優先事項とし、着実に力をつけてきた同社。日本市場においても、Eコマースやサブスクリプションといった、化粧品ビジネスの非伝統的分野にいち早く進出し、成功を収めてきました。
現在は、オンラインとオフラインのハイブリッド戦略によるパーソナライゼーションに力を入れる同社。今回はそのキーパーソンである、日本ロレアルのフィリップ・アルシャンボー上席副社長に、同社のデジタル戦略の全容を聞いています。
個人的には、後半の質問にある「オンライン化とブランドイメージの両立」が、これからの高級ブランドビジネスの、大きなテーマになると感じています。
化粧品業界において、ブランド・エクイティ(あるいは、その源流となるブランディング/マーケティング戦略)の占めるビジネスインパクトの大きさはご周知の通りです。
ある意味、“孤高の存在”であることも含めて構成されていた、“気品”や“豪華”といったブランドイメージを、消費者との距離が必然的に近くなるオンラインビジネスやサブスクリプションに移行する中でどう保っていくのか。
デジタルを活用して「一貫性のあるメッセージと顧客体験を届けること」が解なのであれば、ロレアルの事例に学べる部分は多いと思いました。ロレアルがModiFaceを買収したときには、いい買い物をしたなと思いました。ARの最先端技術を持った会社で、とてもクオリティの高いサービスを提供していました。
自分の顔に合わせた自然なメークをバーチャル体験できるというものです。塗り絵とはまったく違う、精度の高さです。シミやシワなど肌の改善も、AR体験できます。
ロレアルのDXは、サプライチェーンの変革を含め、早くから着手していて、本格的なものだということがよくわかりました。10年前からDXに本気で取り組んでいたからこそ、コロナ禍による店舗の売り上げ減にも持ち堪え、ECの順調で速やかに業績を回復したロレアル。美容部員など全ての従業員をデジタル武装させるトレーニング、パーソナライズへの対応などの取り組みについて、シニアバイスプレジデントのアルジャンボーさんに、この10年の軌跡をじっくりお伺いしました。