[ワシントン 27日 ロイター] - 米軍は27日、イランが支援する武装組織のシリアとイラクの拠点を空爆した。武装組織がイラクの米施設・人員に対しドローン(無人機)攻撃を行ったことを受けた。米国防総省が発表した。

発表によると、空爆はシリア国内の2カ所、イラクの1カ所で武装組織の作戦拠点や武器庫を標的に実施された。同省は死傷者が出たかどうかについての見解を明らかにしていないが、当局者によると、現在調査が進められているという。

一方、武装組織側は声明で、メンバー4人がシリア・イラク国境での攻撃で死亡したとし、報復を行うと表明した。

今回の攻撃は、バイデン大統領の指示で実施された。バイデン氏がイランの支援を受ける武装組織への報復攻撃を指示するのは5カ月前の就任以来2回目。前回は2月で、イラクでのロケット弾攻撃を受け、シリアでの限定的な空爆を指示した。

国防総省は声明で「今夕の攻撃で示された通り、バイデン大統領は米国の人員を守るため行動すると明確にしてきた」と述べた。

バイデン政権は2015年のイラン核合意への復帰を模索している。今回の報復攻撃は、米軍関係者を守るための防衛的な空爆と、イランとの外交を両立させようとするバイデン氏の試みを示すものとみられる。

バイデン氏とホワイトハウスは27日の攻撃に関するコメントを控えた。

ただバイデン氏は、近く任期を終えるイスラエルのリブリン大統領と28日にホワイトハウスで会談し、イランを巡る問題やイラン核合意復帰に向けた米国の取り組みなど含む幅広い議題について協議する予定だ。イランの宿敵であるイスラエルにとって、米国の核合意復帰への取り組みは深刻な懸念をもたらしている。

米政府当局者2人が匿名を条件にロイターに語ったところによると、イランが支援する武装組織は4月以降、イラクの米軍・連合軍関連施設に対して、少なくとも5回のドローン攻撃を行っているという。

国防総省は今回の攻撃について、イランが支援する「カタイブ・ヒズボラ」や「カタイブ・サイード・アル・シュハダ」などの武装組織が使用している施設を標的にしたと説明した。

同省の当局者は、これらの施設の一つはドローンの発射と回収に使用されていると述べた。

当局者らによると、米軍は戦闘機「F15」「F16」を使って空爆を実施。パイロットは任務から無事に帰還したという。

当局者の1人は「攻撃は全て意図したターゲットにヒットしたと評価している」と語った。

イラン外務省報道官は28日、米国に対し中東に「危機を生み出す」のを止めるよう要求。「米国が地域の安全保障を混乱させていることは明らかだ。米国は今回の混乱の犠牲者の一人となるだろう」と述べた。