[22日 ロイター] - ようやく長いロックダウンから抜け出したところです。友達になれますか─。

コロナ禍での長い孤立から解放された多くの人々が、真っ先に思い浮かべるのは恋愛関係ではない。この1年間不足していた友人関係やグループ付き合いだ。

「ティンダー」、「バンブル」といった出会い系アプリ企業はこう判断し、友達作りや友人関係の維持に特化したサービスに力を入れている。

「出会いの世界では実に興味深い傾向が見られる。プラトニックな関係を持ちたいという欲求だ」と語るのは、バンブルのホイットニー・ウォルフェ・ハード創業者兼最高経営責任者(CEO)だ。

「人々は、コロナ禍前ならオフラインでしか得られなかったような友人関係を求めている」

同社はBFF(永遠に最高の友達)機能に投資し、昨年9月時点で同社の月間アクティブユーザー総数の約9%をBFFが占めるようになった。「さらに拡大の余地があるため、この分野にもっと重点を置いていく」とハード氏は話す。

「ティンダー」や「ヒンジ」など数多くの出会い系アプリを傘下に収めるライバル企業、マッチ・グループも、恋愛以外の分野に注力している。同社が今年17億ドル(約1800億円)で買収した韓国のソーシャルメディア企業ハイパーコネクトのアプリでは、世界中の人々がリアルタイム翻訳機能を用いてチャットすることができる。

ハイパーコネクトの売上高は昨年、50%も増加。地元やオンラインイベントで、自分と似た関心を持つ人々と出会えるアプリ、「ミートアップ」は加入者が22%増えた。ミートアップで今年最も検索数が多かった言葉は「友達」だ。

<1年以上の友達>

エバーコアのアナリスト、シュウエタ・カールジュリア氏によると、世界中でコロナ禍の制限措置が徐々に緩和され、対面で人と会えるようになった今、こうした友達サービスの利用は増えている。さらに多くの顧客獲得を目指すことは、ビジネス的に理にかなっていると同氏は言う。

「独身者だけをターゲットにしていたところから、独身者と既婚者両方の市場へと、狙える市場が開かれてきた」

ロンドンでホームステイ中のフランス人、アモさん(22)も対面で会うことの大切さを強調する。「リアルの世界が完全に閉ざされていて、オンラインだけという状態だと関係を続けるのが難しい。実際に会わないと本当にはつながれない」と言う。アモさんはバンブルBFFの利用者だ。

英ブリストルに住む歯科看護師のロージーさん(24)はロックダウン中、元同僚と関係を維持するのに苦労し、3週間前からバンブルBFFを使って新たな出会いを探し始めた。

「私はすごく社交的な人間で新しい人と出会うのが大好きなのに、その機会が全く無かった。これまでボーダフォン(携帯電話業者)のテキストメッセージだけだったのが、このアプリを使い始めてからは賑やかになって楽しい。同じような女子はたくさんいるみたい」

インド西部の都市プネー出身の教師、ニュプールさん(25)はティンダーとバンブルの両方使っている。アプリ運営会社が、恋愛の相手だけでなく友達を探す手段としてのサービスに力を入れるのは「すごくうまくいきそうだ」と思っている。

ニュプールさん自身、「オンラインで何人かと知り合い、実際に会ってもう1年以上、友達関係が続いている」

実際、市場調査会社アップトピアによると過去数カ月間、「ミートミー」や「ユーボ」といった友達作りサービスの1日当たりエンゲージメント(反応)数は、一部の人気デートアプリを上回るほどになっている。

<流れは定着へ>

証券会社キャナコード・ジェニュイティによると、「LGBTQ+」の人々を対象とした出会い系アプリも、社会的つながりの側面に力を入れている。例えば中国の「ブルード」は代理出産関連のサービスを提供し、同「タイミ」はライブ配信を行う。

ゲイ向けの出会いアプリ「ホーネット」は、容姿や住んでいる場所の近さに重点を置くデートに特化したサービスよりも、趣味・関心に的を絞ったソーシャルメディアとしての性格を強めようとしている。

ホーネットのクリストフ・ウィッティング創業者兼CEOは、LGBTQ+の人々が夜の街や社会・政治運動、スポーツイベントなどオフラインの場だけを通じてコミュニティーとつながっていた「古いやり方」に戻る可能性は小さいと言う。

ウィッティング氏によると、ホーネットのユーザーがニュース配信やコメント、動画をタップする回数は5月までの1年間で37%増えた。

同氏は、バーやジム、LGBTQ+の「プライド」イベントが閉ざされていたロックダウン中、オンラインで友達やコミュニティーを求める人の数が増えたと指摘。「この傾向は定着する。ビデオ会議やリモートワークと同じように」と語った。

(Aniruddha Ghosh記者, Subrat Patnaik記者 Sarah Morland記者)