[ニューヨーク 18日 ロイター] - 株式市場にとって今年最大の取引イベントになるかもしれないFTSEラッセル指数銘柄の入れ替えが25日に訪れる。投資家が今年、これに身構えるのは、新型コロナウイルスのパンデミックの影響や、インターネットでの情報拡散が取引を左右する「ミーム株」に象徴される相場大変動が反映されるとみられるからだ。影響を受ける投資資金も何兆ドルもに上る可能性がある。

FTSEラッセルの年次調整は毎年6月の最終金曜日。小型株のラッセル2000指数、大型株のラッセル1000指数、両者を合わせたラッセル3000指数のほか、ラッセル1000グロース株指数、ラッセル2000バリュー株指数も対象となる。

入れ替え日はしばしば、1年で最も出来高が膨らむ日になる。投資家やファンドマネジャーはポートフォリオに指数変更を反映させるため、数十、いや数百の銘柄の売買に殺到することになる。今年は多くの市場関係者が、ゲームストップやAMCエンターテインメントといった大きく値上がりしたミーム株に注目。特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じ上場した企業からも目が離せない。

FTSEラッセルによると、ラッセルの米国株指数に連動する投資家の運用資産は昨年末時点で約10兆6000億ドルだった。

FTSEラッセルは時には、複数クラスの株式を発行することになった企業の組み入れや組み入れ継続を認めるなどの一部の規則改定も行うが、今年はそうした改定はないもよう。

FTSEラッセルのプロダクトマネジメント担当ディレクター、キャサリン・ヨシモト氏は「われわれの政策チームは市場参加者および当方の委員会と定期的に話し合っている。必要と認められた新規則は今回ない」と述べた。

ラッセル3000指数の組み入れ銘柄の時価総額の変化を見ると、昨年は31兆4000億ドルだったが、今年は5月7日時点で47兆7000億ドルに増加している。

株式相場の急変動でラッセル指数もここ2年、めまぐるしく動いた。昨年初めごろはパンデミック懸念で急落したが、第1・四半期末ごろには反発。その後は年末まで回復した水準をほぼ維持した。今年になると、ワクチン配布の進展やロックダウンの緩和に伴う株高で、ラッセル指数の時価総額も急増した。

ジェフリーズの株式ストラテジスト、スティーブ・デサンクティス氏は「資産が増え、値上がりも勢いづいた」と指摘。ウェートが高まった銘柄は新たな買いも誘い、出来高が増えるため、今年は過去何年かよりも取引量が多くなるとの見方を示した。

大型株のラッセル1000指数と小型株のラッセル2000指数の対象銘柄の時価総額の「分水嶺」も、昨年は30億ドルあたりだったが、今年は52億ドル近辺になっている。

ゲームストップやAMCエンターテインメントなどのミーム株ほど、パンデミックの時代の取引環境をまざまざと示した銘柄グループはおそらくない。当初は価格が低迷し、ファンダメンタル面の弱さから多くの機関投資家に空売りの標的にされた。しかし、手数料無料の取引サービスを利用するような個人投資家が、政府からのコロナ給付金を元手に投資に参入すると、急激な値上がりに転じた。

AMCの時価総額は今年5月7日に43億ドルになっていたが、6月17日には300億ドル余りまで増加。この時点でラッセル2000指数組み入れ銘柄の時価総額の上限73億ドルを大きく上回っていた。

ゴールドマン・サックスの予想によると、ラッセル3000指数には255銘柄が加わり、295銘柄が除外。ラッセル1000指数に加わるのが57銘柄で、うち34銘柄がラッセル2000指数からの移行。ラッセル2000指数には新規で232銘柄、ラッセル1000からの移行で47銘柄の計279銘柄が入るとみている。

新規組み入れが予想される多くが、SPACとの合併を通じて上場した企業。ジェフリーズのデサンクティス氏は、ラッセル3000指数に加えられる銘柄の25%余りがSPAC銘柄と予想する。

ベアードの投資ストラテジスト、ロス・メイフィールド氏は「今回はSPACの年であり、ミーム株の年」と話した。

入れ替えの当日に出来高が増えるのは毎年引け際が多い。出来高が年間で最大となることもしばしばある。ナスダックとニューヨーク証券取引所にはこのイベントのための緊急時対応計画がある。

KBWのアナリスト、メリッサ・ロバーツ氏は、この銘柄入れ替えに関連するパッシブ運用ファンドからの取引が、大半は引け際の約15分間に集中することになり、差し引きで総額750億ドル近い取引になると予想している。

(Chuck Mikolajczak記者)