[トロント 20日 ロイター] - 来年から始まる見通しのカナダ銀行(中央銀行)による次の金融引き締めサイクルは、巨額の財政出動や家計の現金保有が潤沢なことを背景に、過去数十年で初めて政策金利の最終到達点(ターミナルレート)が直近のサイクルを上回る、というのが投資家の見立てだ。

1990年代初め以降の主な4回の引き締めサイクルでは、いずれも政策金利を直近より低い水準までしか引き上げられなかった。

だが次は状況が異なる可能性がある。内外の経済対策が歴史的規模に膨らみ、新型コロナウイルス危機からの景気回復が以前の回復局面よりも力強くなるとみられるからだ。実際カナダ政府は景気刺激のために向こう3年で国内総生産(GDP)のおよそ5%の1010億カナダドル(810億米ドル)を支出、さらにカナダの輸出の約75%を占める米国も数兆ドルのインフラ投資計画を打ち出している。

カナダ中銀はより高水準の利上げを達成できれば、今度は新たな危機時により大きな利下げ幅を確保するメリットが得られる。借り入れより貯蓄と投資に動く動機を高め、経済構造の転換も促進できる。カナダ国民は近年で借金を重ね、国内住宅市場が世界で最も過熱する事態につながっている。

中銀が示唆しているのは、現在過去最低の0.25%にある政策金利を来年後半に引き上げることが可能だというシナリオ。これは2023年中の利上げを想定する米連邦準備理事会(FRB)よりずっと早い。

<膨大な貯蓄>

スワップ市場のデータに基づくと、カナダの政策金利は今後5年以内に約2%まで上昇する見込み。直近の引き締めサイクル時のターミナルレートは1.75%だった。

TDセキュリティーズのチーフ・カナダ・ストラテジスト、アンドリュー・ケルビン氏は「今回は財政出動の規模がずっと大きく、私からするとそれが様相を一変させている。前回の引き締めサイクルでカナダは、どの中銀も(経済・物価に)中立的とみなす政策金利水準にたどり着けなかった世界全体の流れに逆らえなかった」と指摘した。

カナダ中銀が推計する今の中立的金利水準は1.75-2.75%だ。

また中銀の試算では、パンデミック期間の政府支援と節約志向が重なった結果、昨年の国内貯蓄はおよそ1800億カナダドルも増加。CIBCキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、ロイス・メンデス氏によると、この貯蓄が今後10年間の消費を押し上げ、政策金利を直近サイクルのピーク以上に押し上げるだけでなく、中立的水準超えに持って行く可能性があるという。

メンデス氏は「全ての貯蓄はいずれどこかに向かわなければならない。何十年も各世帯の預金口座にとどまっていることはない」と述べた。

(Fergal Smith記者)