[キャンベラ/ロンドン 15日 ロイター] - 英国、オーストラリア両政府は15日、自由貿易協定(FTA)で合意したと発表した。関税を撤廃し、貿易手続きを簡素化する。

英国にとっては、欧州連合(EU)離脱後に初めて合意したFTAとなる。英国はインド太平洋諸国との通商・外交関係強化を目指している。

オーストラリアのテハン貿易相が発表した声明によると、モリソン豪首相とジョンソン英首相は14日に英首相官邸で会談を行い、FTAに関する全ての懸案事項について合意した。

ジョンソン首相は「英豪関係の新たな夜明けだ」との声明を発表した。

英国は、豪州にとって8番目の貿易相手国。豪州は、英国にとって20番目の貿易相手国。貿易総額は269億豪ドル(207億米ドル)。

詳細はまだ明らかになっていないが、英政府の試算では、豪とのFTAは英経済生産を長期的に5億ポンド(7億0570万ドル)押し上げる可能性がある。

約2兆ポンドに達する英国の国内総生産(GDP)との比較では少額だが、EU離脱を受け、数十年ぶりに独自の通商政策を策定できた点を評価する声が出ている。

英国のトラス国際貿易相は「根本的な自由化協定であり、すべての英国製品に対する関税が撤廃される。英国のサービス業やハイテク企業に新たな機会が開かれ、英国人の旅行や仕事上の協力が容易になる」と述べた。

英豪FTAを巡っては、英畜産業界が豪産の牛肉や羊肉の輸入関税が撤廃されれば市場から締め出される可能性を懸念している。

英政府は、無関税の輸入には15年間にわたって上限が設定されるため、英国の農家は保護されると説明している。

オーストラリアのリトルプラウド農相は、詳細を明らかにしなかったが、同国の農家がFTAで恩恵を受けると指摘。4BCラジオに「全体として、豪州の農業の大勝利になる」と述べた。

ただアナリストからは、貿易でアジアのウエートが高い豪にとって英国とのFTAはさほど重要ではないとの見方が出ている。

豪モナシュ大学のベン・ウェリングス上級講師(政治・国際関係)は「(英豪)FTAは具体的な恩恵を直ちにもたらすものではなく、象徴的なものだ」と述べた。