[カービスベイ(英イングランド) 12日 ロイター] - 英国のジョンソン首相は12日、英領北アイルランドの貿易を巡る欧州連合(EU)との対立について、英国は領土保全のためには「何でもする」と述べ、セーフガードの発動も辞さない考えを示した。

バイデン米大統領が双方に歩み寄りを促しているにもかかわらず、ジョンソン氏はこの問題で譲歩しない意向だ。

ジョンソン氏はスカイニュースに対し、「問題解決は可能だと思うが、英国が何でもする覚悟だと理解するかはEU次第だ」と発言。「北アイルランド議定書が現状のまま適用される場合、われわれは議定書第16条(セーフガード条項)の発動も辞さない」と語った。

ジョンソン氏はこれに先立ち、主要7カ国(G7)首脳会議の合間に、マクロン仏大統領、メルケル独首相、欧州委員会のフォンデアライエン委員長らと会談した。

この会談で、EU側は英国に対し、すでに合意した離脱協定の全面的な履行と、英本土・北アイルランド間を移動する一部製品への税関検査の導入を再度求めた一方、英国は対立緩和に向けた迅速かつ斬新な解決を呼び掛けた。

メルケル氏はこの問題で実務的な解決策が必要との考えを示した。また、関係筋によると、マクロン氏はジョンソン氏に対し、離脱合意を順守するならば、英国との関係改善は可能だと伝えた。

世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長は、英国とEUの対立が貿易戦争に発展しないことを願うと語った。

英国のEU離脱協定に盛り込まれた北アイルランド議定書は、EU加盟国のアイルランドと英領北アイルランド間の自由な物流を認める一方、北アイルランドと英本土間のモノの移動には一部に検査が導入された。だが、ジョンソン政権は北アイルランド向けの物流に支障をきたすとして、冷凍肉の検査など議定書の一部条項の履行を一方的に遅らせている。

議定書第16条は、協定が経済的、社会的あるいは環境的な困難につながるとみられる場合には、互いにセーフガードを発動できるとしている。