「覚せい剤中毒より治療が困難」普通の人を薬物依存に陥らせる"あるクスリ" - 精神科医の気軽な処方が根本原因
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日本におけるベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬の薬物依存は深刻な問題です。その大半が処方薬によるものであることから、患者さん側に依存症であるという自覚が乏しいことも問題を更に難しくしています。
ベンゾジアゼピンは短期間必要時のみ使用する場合は非常に有効な薬ですが、長期間使用すると依存症を形成します。依存状態になると、内服を急に中止するとすると極めて不快な身体的離脱症状(俗に言う禁断症状)を生じます。時には痙攣、震戦せん妄など、生命に関わる深刻な離脱症状が起きることもあります。
一方、覚醒剤依存症の方が急に使用を止めても心理的な離脱症状はあるものの、身体的離脱症状はほとんどありません。この点においても、ベンゾジアゼピン依存症の方が、覚醒剤依存症よりも治療が難しい一因です。
米国においてはベンゾジアゼピンは依存症のリスクが高いことから麻薬と同じ規制薬物に指定されており、その処方が厳しく監視、規制されており、長期使用は原則禁忌とされています。一方、日本ではまだまだベンゾジアゼピンの多剤多量長期処方が一般的に行われているようです。
そのため、日本から米国に来たばかりの患者さんを診療する場合、根本的な問題の治療の前にまずベンゾジアゼピンの減薬に取り組まなくてはいけない例が非常に多いです。
ベンゾジアゼピンの減薬には非常に時間がかかることが多く、断薬までに数年かかることも珍しくありません。ベンゾジアゼピン依存症及びその治療についての資料・ガイドラインはアシュトンマニュアルが有名で、一般の方向けの日本語版も公開されいています。私もこれに沿ってベンゾジアゼピン依存症の治療を行っています。
以下、アシュトンマニュアル日本語版
https://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf