(ブルームバーグ): 東芝は14日、コーポレートガバナンスをさらに強化するため、取締役会の下に戦略委員会を設置して経営改革を目指すと発表した。同時に適正資本を検証し、増配となる前期の配当金支払いに上乗せする形で1500億円の追加株主還元を行う方針も決定した。

発表によると、前期(2021年3月期)の年間配当を1株当たり80円とし、前の期比60円の増配とする。1500億円に上る株主還元の具体的な方法は6月上旬に決定の上、公表する予定。

綱川智社長兼最高経営責任者(CEO)は会見で、今後の取り組みとしてまず、株主やステークホルダーとの対話を重視する姿勢を示し、「いろんな時間軸、いろんな考え方を持たれているので、全ての投資家と幅広く深く対話していきたい」と述べた。綱川氏は社内での信任低下などから辞任した車谷暢昭氏に代わり4月に就任した。

戦略委は取締役会議長を委員長として複数の社外取締役で構成し、執行部から独立した立場で取締役会の意思決定を支援する。株主やその他ステークホルダーと対話するほか、事業・財務戦略を検証して株主などに説明する方針だ。

戦略委は取締役会が選定したUBS証券などのフィナンシャルアドバイザーから助言を受ける。今後、具体的かつ実現可能性のある買収提案があった場合には、取締役会として真摯(しんし)に対応、検討するとしている。

東芝を巡っては、英投資会社CVCキャピタル・パートナーズが非公開化を目的とした買収提案を凍結している。綱川社長は買収提案があれば慎重に判断するとし、非公開化を含め「企業価値が上がるためのさまざまな提案を受けること、検討することはやぶさかではない」と強調した。

このほか新たな中期経営計画(25年3月期までの3年間)を10月に公表する予定も公表。新型コロナウイルスや米中貿易摩擦、カーボンニュートラル、デジタル化社会など環境変化を受けた事業ポートフォリオの見直し戦略を盛り込む予定だ。

財務戦略では基礎収益力を強化しながら成長分野に集中投資する方針を示し、今期(22年3月期)は210億円を先行投資するとしている。株主還元策では配当性向30%以上を基本に安定・継続的な増加を図る。不正会計問題を踏まえ、「グローバル内部通報制度」を新設し内部統制を強化することなども公表した。

発表を受けて前日比マイナス圏で取引されていた東芝の株価は急反発し、一時前日比3.2%高の4615円まで上昇した。

同日公表した今期の営業利益予想1700億円はブルームバーグがまとめた予想平均1741億円をやや下回った。前期の営業利益はその前の期比20%減の1044億円だった。

(背景を追加しました。前期の表記を2021年3月期に、中計の最終期限を25年3月期に訂正済みです)

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