[東京 13日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は13日の参院財政金融委員会で、上場投資信託(ETF)の日々の買い入れについて、金融政策決定会合で決めた方針の下で市場動向を見ながら実務的な判断で行っていると述べた。具体的な買い入れ方針は、市場に不測の影響を与えるとして言及を避けた。

半期報告を行った後、黒田総裁ら幹部が与野党議員の質問に答えた。日経平均株価が下げ基調を強める中、日銀の動向に注目が集まっている。黒田総裁は、ETF買い入れは「数日間で株価がどれだけ下がったなど、機械的なルールで行っているわけではない」と述べた。日銀は5月に入ってから12日までETFを買い入れていない。

黒田総裁はまた、ETF買い入れは他の主要中銀が行っていない異例の措置ではあるが、物価目標の実現に向けてリスク性資産の買い入れを含む金融緩和は引き続き必要な施策であると指摘。金融政策を担当する企画局の内田真一理事は、市場が大きく変動した時にまとめて大規模に行うのが効果的だとした。

昨年後半以降の株高については、黒田総裁は世界経済の回復期待や企業収益の改善予想が反映されているとの見方を示した。内田理事によると、保有ETFの損益分岐点は日経平均で2万1000円程度。

黒田総裁は、日銀の金融緩和による経済活動へのプラス効果が「国民各層に幅広く及んでいる」とし、その上で「金融面の不均衡のリスクを含め、様々なリスクに十分な注意を払いながら、適切な政策運営に努めていく」と語った。

また「超長期金利の過度な低下が経済活動に悪影響を及ぼす可能性を念頭に金融緩和を実施する」とも指摘。追加の金融緩和については「長短金利のさらなる引き下げも重要なオプション」とし、実施の際に金融機関の収益への影響を和らげるため貸出促進付利制度を導入したと説明した。

<米国の消費者物価上昇、「一時的なもの」>

米国で消費者物価(CPI)が大きく上昇したことを受けて、市場から金融引き締めが近くなったという声が出ている。黒田総裁はCPIの上昇は「一時的なもの」との認識を示し、米国の金融政策を変更させるものではないとの見解を語った。

日本については「少なくとも消費者物価が急騰する状況ではないし、インフレ懸念を感じていることはない」とも述べた。

<コロナ対応プログラム、「必要なら再延長」>

半期報告で黒田総裁は、経済の現状について、感染症の影響から引き続き厳しい状態だが「基調としては持ち直している」との認識を示した。先行きも外需の増加や緩和的な金融環境などで回復していくとみているが、見通しについては当面「下振れリスクが大きい」と述べた。

質疑応答では、黒田総裁は新型コロナウイルス変異株の感染拡大の影響は「相当慎重にみていく必要がある」と指摘。日銀の新型コロナ特別プログラムは9月末に期限を迎えるが、内田理事は「必要であれば、さらなる延長も検討したい」とした。

2%の物価安定目標については、黒田総裁は、実現していないのは「残念なこと」としつつ、実現に向けて最大限の努力していくと述べた。

<マイナス金利の金融機関収益への影響>

マイナス金利政策の金融機関収益への影響について、日銀の山田泰弘理事は「マイナス金利の影響だけを取り出すことは難しい」と指摘。その上で、金融機関の2019年度決算の当期純利益はマイナス金利を導入した15年度対比で約1.3兆円減少したと説明した。

日銀は地域金融機関の経営効率化を狙って3月に特別当座預金制度を始め、山田理事によると「(金融機関からの)応募はかなりの数に上った」という。ただ、日銀が金融機関に支払う利息の総額は要件を満たした金融機関の数や預金残高によるため、現時点で答えるのは難しいとしている。

中央銀行デジタル通貨については、現時点で発行計画はないものの日銀は4月から実証実験の第1弾を開始。内田理事は「仮に中銀デジタル通貨発行する場合でも、需要のある限り現金の供給を続ける」との考えを示した。