[ニューヨーク 16日 ロイター] - 米株式市場ではここ数週間、代表的な成長株であるハイテク株の「復権」が鮮明で、いわゆるバリュー株への乗り換えが一服している。背景にあるのは長期金利が低下に転じたことや、四半期決算をにらんだ警戒感などだ。

S&P総合500種の情報技術セクターは4月の上昇率が8%と、総合500種全体の5%を上回った。同セクター以外に属するハイテク関連銘柄のアマゾン・ドット・コムやテスラ、グーグル親会社アルファベットなども軒並みアウトパフォームしている。

昨年終盤に新型コロナウイルスワクチンが登場して以来、数カ月にわたって株式市場を引っ張ってきたのは銀行、エネルギーといった景気動向に敏感なバリュー株で、ハイテク株の値動きは相対的に劣勢を強いられていた。

ところが4月に入って米国債価格が大幅反発(金利は大幅低下)するとともに、バリュー株の多くは上昇の勢いが弱まっている。これについて一部の投資家は、足元の経済データが示す経済の急成長は既に相場に織り込まれたのではないかと受け止めた。

入れ替わる形でハイテク株が再び市場の主役に躍り出た要因の1つは、やはり米国債の動きだ。4月初め以降、10年債利回りは約15ベーシスポイント(bp)下がって16日時点で1.6%前後になった。

ハイテク株をはじめ、バリュエーションと将来の収益への期待が高い銘柄は特に利回り上昇が逆風になる。多くの標準的な投資モデルで利回り上昇はこれらの株価を押し下げてしまうからだ。第1・四半期の10年債利回り上昇幅はおよそ83bpだった。

パットナム・インベストメンツのシニア市場ストラテジスト、クリス・ガリポー氏は「市場参加者は恐らく大いに安心感を持ち、『オーケー、金利が一本調子で(2.5%)に向かうことはなさそうだ』と話していることだろう」と述べた。

一方アライ・インベストのチーフ投資ストラテジスト、リンゼー・ベル氏は「ハイテク株と成長株が幾分上向き始めたのは、市場参加者がやや警戒姿勢を強めているからだ」と語り、少なくとも四半期決算シーズンを乗り切るまで投資家は様子見モードを維持すると予想した。19日の週には、ネットフリックスとインテルが主要ハイテク株の先陣を切る形で決算を発表する。

ハイテク株やその他の「巣ごもり」関連銘柄は、米国内のワクチン接種に何か重大な問題が起きたり、景気回復の妨げになるような要素が発生したりすれば、強含んでもおかしくないとの声も聞かれる。

例えば米食品医薬品局(FDA)がこのほど、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチン使用の中断を勧告すると、株式市場では経済活動再開がプラスに働く旅行関連セクターから巣ごもり関連セクターへの資金シフトが起きた。

ただ投資家の間では、最近のハイテク株の堅調は一時的で、いずれバリュー株と景気敏感株が市場を再びけん引するとの見方が多い。米連邦準備理事会(FRB)が今年は約40年ぶりの高成長になるとみており、そうした経済情勢の恩恵を最も受けるバリュー株を投資家が保有しようとするからだ。

ガリポー氏は、成長株の上昇が一服した後にまた反発し、そこで一休みしたバリュー株が次に上昇するという流れがこれから数年続いても驚かないと話した。

もっとも株式市場全般の先行きをより懸念する向きも出ている。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチは最近公表したリポートで、株式投資に慎重になるべき理由として割高感や過去1年間の突出したリターンなど5項目を列挙。年末のS&P総合500種の予想を3800と、現在より9%程度低い水準に設定した。

(Lewis Krauskopf記者)