[東京 13日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のジョナサン・オストリー副局長は13日、アジアの経済見通しについて半年前よりも明るい見通しを示したが、米国の金利が想定以上に速く上昇すればアジアからの資本流出が起こり、市場の混乱につながる可能性を警告した。

副局長はネット会見で、新型コロナウィルスのパンデミックによる昨年の低迷からアジアは回復しているが、世界的な需要の急増で恩恵を受けている国と観光依存の国との間には差が生じていると指摘。「ワクチン接種の展開の抑制、コロナ変異体に対するワクチンの有効性、感染の再燃などが重要な下振れリスクにつながる」と述べた。

IMFは、米国や中国の旺盛な需要が日本、オーストラリア、韓国などの成長が堅調となり、アジアの成長率は今年7.6%となり、10月に予測した6.9%から上方修正した。22年は5.4%成長と予想している。

副局長は、この成長見通しは、米国の財政・金融政策の影響を受ける可能性があるとし、米国の巨額の財政支出は輸出型経済国にとってはプラスだが、米国の金利上昇はアジアの新興国市場にすでに影響を及ぼしていると述べた。

「米国の利回りが市場の予想よりも早く上昇する場合、あるいは今後の米国の金融政策についてミスコミュニケーションがあれば、2013年のテーパータントラムのように金融を通じた悪影響と資本流出がマクロ金融の安定性を損ないうことにより課題となる可能性がある」との見方を示した。

外貨準備の蓄積、変動相場制の採用、銀行財務への強力な監督大勢により、アジアの多くの国には急激な資金流出に対するバッファーがあると指摘。「しかし、政府、家計、企業バランスシートでのレバレッジの増加は、借入コストの上昇が発生した場合に悪影響を及ぼすことを意味する」と語った。

オストリー副局長は、世界的な需要回復とコモディティー価格上昇が生産者価格を押し上げたとしても、アジアのインフレは「かなり抑制される」可能性が高いとし、「アジアの回復はまだ完全には定着しておらず、これによりインフレ圧力は抑制される見通しだ」と述べた。

ロイターとの書面インタビューで明らかにした。