[ワシントン 1日 ロイター] - 米財務省の当局者は1日、国際通貨基金(IMF)による総額6500億ドルの特別引き出し権(SDR)拡充が8月に実施される可能性があると明らかにした。ただ、加盟国に新規配分されるSDRのうち、低所得国が実際に活用するのはごく一部にとどまる公算が大きいとした。

当局者らによると、財務省は米議会にIMFのSDR新規配分に関する方針を正式通知し、90日間の意見募集期間が始まった。

米国での手続きが7月上旬に終了した後、IMFの190加盟国で構成する総務会が承認する必要がある。SDRはドル、ユーロ、円、ポンド、人民元の5通貨に裏打ちされた外貨準備資産で、途上国などは外貨が不足した場合にこれら通貨に交換できる。

トランプ前米政権はSDR新規配分に反対したが、バイデン政権のイエレン財務長官は2月に支持を表明。IMFのゲオルギエワ専務理事は先週、SDRを6500億ドル拡充する提案を6月までに理事会に示すと述べていた。

米財務省の当局者らによると、2009年に配分された約2500億ドルのうち、実際にドルやユーロなどに交換されたのは約2%にとどまった。今回は新型コロナウイルス感染対策の原資が各国でなお必要になっているため、交換比率は高まるとみられるが、それでも限定的だろうとした。

新規配分は約7割が20カ国・地域(G20)向け。G20は相対的に多くの資金を有するため、SDRを活用する可能性は低いと当局者らは説明した。

財務省が公表したSDRに関するファクトシートによると、SDRの新規配分のうち、低所得国向けは210億ドルで、中国を除く他の新興国・途上国は約2120億ドルに上る。

ファクトシートはSDRとドルとの交換を求める国の政策が「米国の国益に反する場合は、SDR購入を拒否する権利を米国は留保している」と説明。「大半の先進国や中国などの大国には既に過剰なSDRがあり、新規配分されたSDRを(ドルやユーロなどの)ハードカレンシーに交換するよう要請する可能性は非常に低い」とした。

IMFはこれとは別に、新型コロナの流行で露呈された社会の格差を是正するために、先進国は累進性の強い所得税、相続税、不動産取引税を活用できるとの見解を示した。

IMFの「財政モニター」によると、コロナ禍で、以前から存在していた医療や教育、デジタルインフラの使用機会における格差が悪化しており、これは何世代にもわたり所得格差が残る原因となり得る。

状況を変えるために各国は教育、医療、幼児早期教育への効果的な投資に注力し、社会の安全網を拡充する必要があると指摘。原資を確保するために先進国は所得税の累進性を強め、相続税・贈与税や不動産取引税への依存を高めることが可能だとした。企業の「余剰」利益に対する課税も検討対象になり得るとした。