2021/3/31

地球を守るほど利益が出る。「海のSDGs」最前線

INDEX
  • カキの養殖で水質改善
  • ハイテクと「漁師の知恵」を結集
  • 「混獲」を防いで漁業コストを削減
  • 「クジラ予報」で衝突事故を防ぐ
  • クジラが増えれば温室効果ガスが減る
  • 経済活動と自然保護は対立しない

カキの養殖で水質改善

メイン州の海沿いで生まれ育ったマーティー・オドリン(39)は、かつての海の姿を覚えている。だが、今は「砂漠のようです。しかも、そうなっていったのは私が生まれた後なのです」。ここ数年で、海草などたくさんの種が海岸線から事実上、消えたという。
オドリンは漁師の家に生まれ、海と海岸の歴史を熱心に研究してきた。数百年をかけて海洋生物が壊滅的に失われてきた歴史のほんの一部しか知らなくても、目の前の風景は確かに衰退している。
地元ポートランドでランニング・タイド社を経営するオドリンは、エンジニアとしての経験を活かし、その衰退を逆転させようと挑んでいる。
ロボット、センサー、機械学習を組み合わせた養殖システムを立ち上げ、現在はカキを販売しており、いずれはアサリも手がけるつもりだ。
このシステムを使って昆布も育てている。目標は、大気中の二酸化炭素を吸収した昆布を海底に埋めて恒久的に隔離する仕組みを整え、カーボンオフセットを販売することだ。
さらに、海岸線に沿ってカキ礁とアサリの繁殖場所を設置し、昆布の漁場と海草群を再生させることで、生物多様性を取り戻して水質を改善するなど、沿岸の生態系に貢献しようと計画している。
テクノロジーを駆使してカキの養殖を行うランニング・タイド社(Running Tide via The New York Times)

ハイテクと「漁師の知恵」を結集