2021年3月25日、株式会社ユーザベース 第13回定時株主総会を開催しました。
株主総会後に経営陣が登壇したパネルディスカッションでは、数多くのご質問をいただきました。本記事では、時間内に取り上げきれなかったご質問についての回答を掲載いたします。

※株主総会およびパネルディスカッションの内容は、採録レポートをご覧ください。
Q:売上を30%で伸ばしていくということは新規ユーザーをたくさん獲得していかなければいけないかと思いますが、今後どのような方法で新規ユーザーを獲得していくのでしょうか?
佐久間:
いろいろな方法がありますが、最も重要だと考えているのが事業間の連携です。例えばSPEEDAは、既にほとんどの上場企業へのリーチがあります。この顧客基盤を、多様な事業を伸ばしていくことにも活かしていきたい。そのための1つの施策として、FORCASとINITIALのユーザベースへの合併を行いました。これにより情報共有、連携が進み、新規ユーザー獲得にもつながるものと考えています。
Q:Quartzに巨額投資をして失敗したわけですが、今後売上を伸ばすためにたくさん投資して行きますと言われると、たじろいでしまいます。実際に売上を伸ばす手応えのようなものは感じておられるのでしょうか。
佐久間:
我々は「会社をつぶさない」ことを一番の目的にしています。従って、我々が投資する際には勝機を得て投資をします。その場合も、少額の投資から始め、投資のエコノミクスを確かめ、徐々に投資の金額を増やしていきます。なので、売上を伸ばす手応えのない大きな投資はしません。また、Quartzの件から学び、バランスシートを大きなリスクにさらすような投資は現在考えていません。
Q:経営陣は普段リモートワークでしょうか? 多様性や働きやすさをリードする会社であって欲しく、オフィスありきでない柔軟な会社であって欲しいです(オフィスなくしますとIRする会社は株価にもポジティブに反応しますよね)
松井:
現在は経営陣含め、全社で週2回程度の出社を目安としたガイドラインを出していますが、実態としては部門によっても異なりますが月に1〜2回程度が多いです。創業来、いつどこで何時から何時まで働くのかは、法律の範囲内である限り自由とされていた弊社ですので、コロナ状況下におけるリモートワークへの対応は、非常にスムーズかつスピーディーに行うことができました。
一方で、実際にリアルで対話する重要性、偶然の出会いから生まれる創造性など、コロナ下が長引く中で改めて感じるリアルの重要性もあります。
Afterコロナの時代においては、リモートとリアルのそれぞれの良いところを取り入れた、ハイブリッドな働き方を目指していけたらと考えています。そのためにもオフィスは作業をする場所ではなく、コミュニティとして集う場所として考えています。
Q:組織としてここが課題で、どう変えるかを、新経営陣1人1人のコミットを聞かせてください
稲垣:
私自身会社のメンバーたちを見ていて、メンバー全員が自分の事業に対して妥協なく向き合えていることを本当に誇りに思っています。その良さの裏返しでもあるのですが、改善点はその時々の目の前のお客様への対応や、仲間を助けることに注力し過ぎること。中長期的に生産性を上げていく力がまだまだ弱いと思っています。
ここは経営としてエンジニアチームを自社プロダクト開発の方に集中させ過ぎていて、会社の生産性を上げる方に、あまりリソースを割くことをしなかった私自身の判断の責任・反省もありました。今期エンジニア50名の採用を掲げていますが、この中には社内の生産性向上を担当するチームの拡充も含めています。
これを今期しっかりやり切ることで、メンバーたちの働き方も、よりクリエイティビティを発揮する方向に時間を割くことができますし、結果的に人件費の抑制につながり、利益水準の向上にも寄与できると思っています。エンジニアチーム強化については、私の直下のプロジェクトとして責任を持って進めていきたいと思っております。
佐久間:
起業家精神と共通の強みの両立ですね。ユーザベースには多様な事業があり、その1つひとつを強い起業家精神を持つ経営チームが引っ張っています。これは7バリューの「自由主義で行こう」による、自由に、ユーザーの方だけを向いて経営する、我々の強みです。
一方で、それらの事業の強さを共通の強みとして束ね、その共通の強みから逆に個々の事業の強さが生まれていく、共通の強みを深化させていくところが弱い。もちろん共通化をただ進めれば、起業家精神という我々の最大の強みが弱くなってしまいます。
この2つを両立する組織構造、事業執行システム、バリューをどうつくっていくかが、我々の最大のチャレンジであると考えています。その思想的な部分について、3月1日に「アジャイル経営」というレポートを出しているので、ぜひ参照していただければ。
松井:
課題も良い点もたくさんありますが、1つ挙げるとすると、多様性についてさらに様々な才能が生きる組織にしていきたいと思っています。特に現時点でのグループでの男女比は6:4程度となっていますが、リーダー層に占める女性の割合はまだまだ誇れるものではありません。この点、女性リーダーたる人材がもっともっと育ち、活躍できる組織になるよう私も尽力していきたいと思っています。
千葉:
まだまだ課題が多く、今期注力していきたいと思っているのは、各事業で把握する数値から決算にて開示する数値まで、一気通貫で全ての数値が把握できる状態にしていくことです。これまでユーザベースは各事業が意思決定の裁量を持って運営してきました。
その状態を保ちつつ、グループ全体での投資すべき事項を管理していくためには、数値基盤の確立が必須だと思っています。私はIRも担当しているため、社内の数値基盤を整備するとともに、投資家への皆様との対話も活かしていきたいと思います。
Q:時価総額(=企業価値)を高める経営目標に、新経営陣には一丸となって頂きたいですが、そのためにグロース(売上)が最重要というのが先程の総会での方針でしょうか? 直近の株式市場はグロースからバリューへのシフトが起きつつあり、ユーザベースがグロース一辺倒という認識を発信がネガティブに働かないか懸念しています
千葉:
おっしゃる通り、足下、グロース銘柄に調整が入っていると思います。しかし当社の売上規模、成長率から見るとグロースフェーズかと考えています。一方で、売上成長のために利益を犠牲するという方針ではありませんので、当社の方針を正しく理解していただけるように情報発信していきたいと思います。
Q:これからは一層情報が飽和していくかと思います。ユーザーに本当に必要な情報が届くようにするために、貴社経営陣が大切にしている価値観や経営フィロソフィーがあれば、ご教示ください
坂本:
多様なニーズを持つユーザーの皆様に、本当に必要な情報が届けるために重要なことは、ユーザーの属性・特性ごとに情報をパーソナライズ化することだと考えています。
ユーザベースは創業以来、「人とテクノロジーの力を組み合わせる」ことを重要な価値観として大切にしてきています。
社内外の専門スキルを身につけた人による情報のキュレーションと、ユーザー情報を元にしたアルゴリズムの進化をうまく組み合わせて、ユーザーの皆様に本当に必要な単位で情報を届けられるよう、プロダクトを開発していきます。
Q:稲垣さんに質問です。共同創業者の梅田さんが非常勤となり、Co-CEOに佐久間さんがご就任されましたが、共同代表にこだわる理由が何かあるのでしょうか。改めて教えて欲しい
稲垣:
先にも回答させていただきましたが、私たちはチーム経営をしてきたからこそ、お互いの強みを活かし合い、弱みを補完し合うことで、13年間ここまで成長することができたと思っております。
あるメンバーが創業者3人のことを「梅田さんがどの山に登るかを決めて、新野さんがなぜその山に登ることが素晴らしいのかを説き、稲垣さんがみんなと登る」と言っていました。
エンジニアチーム内でも、創業期から一緒に立ち上げてきた竹内がChief Technologistとして技術的に突き抜けて、1人のエンジニアとしてのあるべきを示し、私がエンジニア1人ひとりと向き合ってマネジメントすることで、チームとしてのエンジニアの文化やキャリアなど、ユーザベースで働くことのハピネスを言語化してきました。どれも1人ではできなかったことでした。
30%成長に向けた新たな経営体制として、佐久間との共同代表によるチーム経営がベストだと考えました。佐久間との分担のウェイトとして、佐久間が事業、私が組織に比重を高めてコミットして進めていきます。私たち2人だからできる経営の形を一緒に作っていきたいと思っております。
Q:FORCASはABMという新しいサービスで認知度もまだまだないと思うのですが、自社でNewsPicksを持っているのだから、NewsPicks上で宣伝すれば良いのではないでしょうか?
佐久間:
ご意見ありがとうございます。過去、NewsPicks上でFORCASの宣伝を実施したこともありますし、今後もその可能性はございます。NewsPicksに限らず、個々の事業を最大限伸ばすために、事業間連携は今後深めていきたいと考えています。そのための1つの施策が今回のFORCASとINITIALのユーザベースへの合併です。
Q:非常に多岐にわたり事業をされていますが、今の役員でモニタリングを十分に行うにあたり、工夫されていることはありますでしょうか?
松井:
まず大前提として、ユーザベースは各ビジネスラインが自律・自走した形でスピーディにそれぞれの経営意思決定を行う、そのための強固な経営基盤やシナジーの創出を共通ファンクションであるコーポレートが担うという組織形態をとっています。
この大前提に従い、各ビジネスラインへの適切なモニタリングと権限移譲のバランスを図っていくことが重要となります。より具体的には、グループ全体で経営目標達成のためにOKR(Objective and Key Result)を目標管理指標として用い、月次のCompany Leader Meetingで各カンパニーごとのOKR進捗を共有しています。
また、各事業別の経営会議や取締役会には、ユーザベースの役員のいずれかが必ず出席する形を取り、事業の解像度を上げるとともに、経営のモニタリング・グループシナジーの創出などを行える体制としています。
Q:いろいろな事業をされていますが、貴社にとって最も重要な事業はどれですか?
稲垣:
想いとしては重要ではない事業ではないですし、すべての事業に私も佐久間も可能性を感じています。またカンパニー制を取ることで、各事業にその事業の責任を負ったCEOや経営チームがいます。各事業の経営チームと連携していくことで、どの事業も妥協なく可能性を追求することができています。
他方でグループを束ねるユーザベースとしては、時間の制約からも取締役会でも扱うレベルのことは優先度・重要度を決めて注力事業を決めています。今年、取締役会では3つの事業に注力しています。創業事業であり最も収益率が高いSPEEDA、そして売上規模として最大となったNewsPicks、また直近では成長率が最も高いFORCASも議題として議論することが増えてきています。そのため、今現在ではこの3つの事業を重要な事業として注力していると言い換えることができると思います。
Q:今後ユーザベースのサービスの中でもっとも伸びるのはなんでしょうか?
佐久間:
難しい質問ですね。当然ながら、全てのサービスを勢いよく伸ばすべく経営しています。短期的には、特にExpert Researchサービスが大きな伸びを見せると期待しています。もちろん売上の絶対額としてはまだ小さいですが、成長率としては大きい。SPEEDAの顧客基盤とのマッチ、Expert Researchのテクノロジー化(FLASH Opinion)の両方に手応えを感じていて、お客様からも高く評価していただいています。今後数年で、SPEEDAの成長を牽引する、ユーザベースの中核サービスに成長すると考えています。