[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米国債市場の利回り動向に複数の債券ファンドマネジャーから懸念の声が出ている。最近の上昇ペースが落ち着かず、こうした状態が続けば無秩序な市場だとみなされる可能性があるとしている。

また、10年債利回りが1月以降、80ベーシスポイント(bp)上昇する中、流動性に問題があるとの声も上がる。同利回りは今週、連邦準備理事会(FRB)が緩和的な金融政策の維持を決め、景気見通しを引き上げたことを受け、14カ月ぶりの高水準となる1.754%を付けた。

ラボバンクによると、一部アナリストは今回の利回り上昇を2013年の「テーパー・タントラム(かんしゃく)」と呼ばれる現象になぞらえている。この時は10年債利回りが136bp上昇し3.06%となった。

PGIMフィクスト・インカムのマルチセクター・戦略担当責任者、グレゴリー・ピータース氏は、金利上昇そのものよりもボラティリティーとスピードが不安要因で「モメンタム」があると指摘。今年の10年債利回りについて、当初は1.25─1.5%のレンジ相場を予想していたが、このモメンタムが金利を押し上げているとの認識を示した。

実際、利回りは市場予想を上回っている。昨年12月のロイター調査によると、60人以上のストラテジストは10年債利回りについて、向こう12カ月で1.2%までの上昇にとどまると見込んでいた。

ダブルラインのポートフォリオマネジャー、グレゴリー・ホワイトリー氏は10年債利回りが近く「2%まで上昇する可能性がある」と話す。

パウエルFRB議長はこれまでのところ、最近の利回り上昇がFRBの金融緩和策に支障をもたらすとの懸念を否定している。しかし、ホワイトリー氏は、急速に上昇すれば再検討を余儀なくされるだろうと指摘。「過去6週間のようなペースで上昇が続けばどこかの時点で無秩序な市場とみなされ、FRBの対応が必要になる」と語った。

米商品先物取引委員会(CFTC)の最近のデータからみて、利回り上昇をもたらしている勢力の一部には比較的長期の国債先物を大幅に売り持ちにしている投機筋の存在が指摘されている。

ナショナル・アライアンスの国際債券担当責任者、アンドルー・ブレナー氏は「現在のモメンタムはショート筋が握っている」と指摘。こうしたショート筋を、インフレ的とみなしている金融政策を変えさせようと中央銀行に圧力を加えるために保有債券を売る投資家を指す「債券自警団」と表現した。

<流動性問題>

債券マネジャーはまた、市場で問題が繰り返される背景として乏しい流動性と価格の変調を挙げた。

米国債市場は世界で最も厚みがあり、流動性の高い市場ではあるものの、新型コロナウイルス対策を受けて新発債の供給が増える中、米国債に対する需要は不安定となっている。

10年物国債の流動性指標となるビッド/アスク・スプレッドは18日、軟調な国債入札を受けて10年債利回りが20bp上昇した日の翌日に当たる2月26日以来の大きさとなった。

米国債市場は2020年3月、米国内で新型コロナウイルスが広がる中、FRBが支援に乗り出すまで流動性危機に見舞われた。

PIMCOの北米担当エコノミスト、ティファニー・ワイルディング氏は「3月の価格変調につながる乏しい流動性の背景となったあらゆる構造的要因は依然として存在している。そしてこれは市場のオーバーシュートをもたらしている」と話した。

(Kate Duguid記者)