[東京 18日 ロイター] - 3月のロイター企業調査では、3割の企業がコロナ後に向けた設備投資資金調達のため、日銀に対し長期金利上昇の抑制を望んでいると回答した。ただ、低金利の副作用とのバランスを取るため、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)政策の維持を求める声も同じく3割程度。上場投資(ETF)買い入れについても、現状維持が半数となる一方、株価の高騰を抑え購入縮小や柔軟な対応を求めるとの回答も5割弱あった。

調査期間は3月3日から12日まで。発送社数は482社、回答社数は215程度社だった。

金融政策の現状維持を期待する回答は53%と半数を占めたが、その意味するところは「さらなる金融緩和が産業を創造するような投資に向かうとは考えられず、単に投機資金と化すばかり」(卸売)など、日銀にはこれ以上、金融緩和の方向に動いてほしくないという指摘が目立つ。

さらに、積極的に現状の緩和政策の見直しが必要だとして「出口戦略の検討」を求める回答は29%と3割弱あった。「現状の緊急措置をいつまでも続けることは異常であり、出口戦略についても検討する必要がある」(運輸)といった意見が多い。

「追加緩和」を期待する声は「資金繰りが厳しい状況であり、様々な緩和が必要」(卸売)など一部にあるが、17%と少なかった。

年初来、長期金利が上昇傾向を示しているが、急激な金利水準の変化は企業には負担だ。調査では、日銀に対して「上昇抑制を期待する」との回答が32%を占めた。「有利子負債が多く、影響が大きい」(不動産)との理由のほか、「設備投資で調達する資金の返済期間は比較的長期を想定しているため、金利上昇は回避したい」(運輸)など、コロナ後を見据えた設備投資資金確保へのコメントが目立った。

ただ、低金利のあまりの長期化には副作用もあることから、一方で「長期金利の現状維持政策」を期待する回答も35%を占めた。「景気後退抑制と副作用拡大抑制のため」(サービス)といった、バランスの取れた政策への期待の表れとみられる。

「金利ターゲットの柔軟化」を望むとの回答は16%で、「今まで通りのやり方を続けるのではなく、柔軟な対応が求められている」(小売)といった声があがった。

「上昇を容認」する対応には「長期金利上昇の容認により、バブル的要素が出ている株価の上昇に歯止めをかけるため」(鉄鋼)などの声もあるが、全体的に少なく12%にとどまった。

日銀によるETFの購入については、「現状の対応を維持」することを期待する回答が50%。「株価安定のため」(小売)には政策を変えないでほしいとの声のほか、「すでに株価は十分上昇しており、これ以上の買い支えの必要はなし」(電機)といった指摘もあった。

「より柔軟な購入対応」を期待する声は27%。「景気動向によりフレキシブルに対応して欲しい」(鉄鋼)としている。

「購入減少」を望む回答は21%だった。「株価が実体経済とかい離している」(不動産)との認識は幅広く、株価水準の正常化を期待する声が目立った。

(中川泉 グラフィック作成:照井裕子 編集:田中志保)