2021/3/29
「事業を共創する伴走者」へ。コンサルタントは、“テクノロジー”を武器に進化する
NewsPicks, Inc. Brand Design Editor
コロナ禍であらゆる産業が変革を迫られる中、コンサルタントの役割も「戦略のアドバイザー」から「事業を共創する伴走者」へと変化している。
役割が大きく変化する中で、コンサルタントはどのようにキャリア形成をしていけばいいのか。
アクセンチュアで20年以上コンサルタントとして活躍するテクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ マネジング・ディレクター 北沢絵里奈氏は、「これからのコンサルタントは、戦略とテクノロジーの両輪を武器にできるかがカギを握る」と語る。
さまざまな分野の専門家と連携しながら、戦略とテクノロジーを武器に新たな価値創出を実現している北沢氏が、約20年のコンサルタント人生を振り返りながら、「戦略×テクノロジー」が切り開くキャリアの可能性について語った。
- Digital is Everywhere
- 技術が生み出す価値とは何か
- ITがビジネスのスピードに追随できない
- 「専門性」が見つかる場所
Digital is Everywhere
──北沢さんは、アクセンチュアで20年以上、コンサルタントとして従事されています。これからのコンサルタントの役割の変化をどのように捉えていますか?
すでに何年も前から言われていたことではありますが、これからは「Digital is Everywhere(デジタルはすべての場所に)」の時代が到来します。
あらゆる職場でAIやIoTの導入が進み、全てのビジネスパーソンにとってデジタルは当たり前の存在になるでしょう。
特にコンサルタントには、コロナ禍により企業のDXニーズが一気に加速したことで、より深いテクノロジーの知見が求められるようになります。
戦略とテクノロジーを組み合わせた提案をできなければ、コンサルタントの存在意義を失いかねない、と言っても過言ではありません。「テクノロジーの食わず嫌い」や、逆に「テクノロジーは得意だけど戦略には興味がない」では、コンサルタントは生き残れない局面を迎えています。
実際、アクセンチュアでも「TQ(TQ:Technologyと、IQやEQのQ=Quotientを組み合わせた言葉で、テクノロジーについての幅広い知識や理解度を測る指標のこと)を高めよ」、という表現が頻繁に使われます。
テクノロジーへの理解は、これからのコンサルタントにとっては最低条件といえます。その上で、経営戦略を具現化していくためのテクノロジーを武器にした実践力が必要になります。
技術が生み出す価値とは何か
──ご自身は、いかにテクノロジーと戦略の素養を身につけてきたのでしょうか。
振り返ってみると、技術への知見を「深める」時期、実践でその知見を「広げる」時期、この2つの時期を経験できたことが大きかったです。
私のキャリアは、開発の現場でプログラミングと運用・保守に始まり、テストと基本設計、要件定義やプロジェクト計画立案など、ITエンジニアとして技術への知見を「深める」局面からスタートしました。
もし開発や運用の現場を経験できていなかったら、今のように「クライアントのこの経営戦略を実現するためには、こんなソリューションの組み合わせが必要で、その実行にはこれくらいの期間・費用が必要で、あのリスクを考慮しておかなければならない」と、現実感をもった企画・構想を立案するのは難しかったと思います。
また様々なテクノロジーの専門家の話を理解し、それをテクノロジーの専門家でない方々にも分かりやすく伝えていく、ということもできなかったでしょう。
その設計や構想に出てくるテクノロジーやシステムが実際にどう動くのか。開発はどれだけ大変なのか。その技術で何ができて何ができないのか。
このような判断をする力を身に付けるには、一つの領域やプロジェクトに一定期間携わり、実際に手を動かすことが必要です。専門性や知識を「深める」時期がなければ、本当に使える引き出しを増やすことはできません。
ただとても大切な時期だったと感じる一方で、当時は目先の機能開発や改善、納期までにリリースすることだけに集中しがちでした。
そんな矢先、マネージャーに昇進したことで、IT戦略策定からプロジェクトに携わったことが大きな転機になりました。
当時のストラテジーグループのマネジング・ディレクターとともに、経営戦略が前提にある上で、「システムや技術が生み出すビジネス上の成果やバリューは何か」を、徹底的に考え抜く数年間を過ごしました。
IT戦略をクライアントと伴走しながら実現していく数年間の経験を通じ、「テクノロジー」を活用して、いかに「ビジネスバリュー」を生み出すか、というIT戦略コンサルタントとしての根幹を会得することができたと思います。
キャリアの前半戦で得た技術を、実践を通して「広げる」経験をしたことで、あくまで技術は手段であり、戦略があった上でのテクノロジー活用だということを、理解することができました。
──その後、IT戦略組織で戦略を手がけたり、製造・流通業界の大規模プロジェクトをリードしたりと、自身の幅を広げる様々なプロジェクトを経験されています。
幸いにもアクセンチュアは、社員のキャリアを尊重してくれる文化があり、実力次第で希望の部署にも異動しやすい環境です。会社を辞めなくても、さまざまな経験を積むことが可能です。私が長年アクセンチュアで働き続けられたのも、社内で転職を繰り返せる環境だったからです。
キャリアの中盤戦では、多種多様な業界の様々な企業のIT戦略立案を担わせていただき、一方で大規模プロジェクトのリーダーとして一つのプロジェクトに深く入り込むなど、「深める」と「広げる」を意図的に繰り返してきました。
専門性を「深める」時期と、そこで得た知見を実践で「広げる」時期、この2つを経験できる環境こそが、戦略とテクノロジーの素養の獲得には不可欠でしたね。
ITがビジネスのスピードに追随できない
──翻って、いま企業がこぞってDXを推進している真っ最中だと思いますが、その現状をどのように捉えていますか?
そうですね。確かに、いま多くの企業がDXに着手していますが、現実は新しいツールやテクノロジーの導入にとどまっているのが正直なところです。
しかし、IT(Information Technology)において本質的に重要なのは「Technology」ではなく「Information」です。
情報資産であるデータをテクノロジーの力を使っていかに蓄積していけるか。そして、そのデータを活用して新しいビジネスを生み出し、ビジネスモデルや顧客体験の抜本的な変革を成し遂げられるか、がDXにおいて重要になります。
ITの力は、テクノロジーを活用した単なる業務効率化だけではないということを、まず経営者は理解する必要があります。
ただ、DXの目的や重要性は徐々に浸透しつつあるものの、「ITがビジネスのスピードに追随できない」というジレンマをご相談いただくケースも増えています。
──ITがビジネスのスピードに追随できない、とは?
加速化するビジネスのスピードに、社内のレガシーなシステムでは追いつけないということです。
いま多くの企業で導入されているのは、業務プロセスをいかに効率化するかを目的としたレガシーと呼ばれる従来型の基幹システムです。
しかし、レガシーシステムでは、自社のデータを抽出することさえ、複雑で時間がかかるという問題を抱えています。
それに、膨大な時間と費用をかけて構築しても、稼働の瞬間から陳腐化が始まってしまうため、再構築を繰り返さなければいけない。それでは、ビジネスの変化に対応できません。
そこで、旧来の複雑化・陳腐化した基幹システムを一度リセットし、新たに作り変えることで、その後も陳腐化しないようアップデートを続けることが求められています。
そんな中、アクセンチュアでは全社規模のDXを支える新たな基盤のコンセプトとして「Living Systems」を提唱しています。
──Living Systemsは、具体的にどのようなアプローチになりますか。
Living Systemsとは、その名の通り「常に改善と進化を継続するシステム」であり、端的にいえば「レガシーという概念」が存在しない世界をつくりたいということです。
システムを作ったら終わりではなく、むしろそこを起点に常に進化し続ける仕組みを作る。それにより、ビジネスサイドの要求に即座に応えることが可能になります。
多くの企業が突きつけられているこの課題を解消するためには、経営と業務、そして情報システムが密に連携しながら、自己変革のためのシナリオを短いサイクルで回していける組織づくりが不可欠です。
これにより、お客様はスピードとパフォーマンスを十分に発揮することが可能になります。
従来のようにITシステムを導入して業務を標準化するといった話なら、お客様も何をやるべきなのか想像ができます。
でもテクノロジーを使って経営や組織の仕組みそのものを抜本的に変えたり、まったく新しいビジネスを生み出すとなると、誰も正解を持っていません。
そこでお客様と一緒に経営や事業全体の戦略を策定し、技術だけでなく人や資金などあらゆるリソースを活用することで、企業内システムを刷新していきながら、成功に向けて実行を支援していく、これが我々の提供価値だと考えています。
「専門性」が見つかる場所
──現在マネジング・ディレクターを務める「テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ」が、前述された役割を果たす部門ということですね。
おっしゃる通りです。私たちは、テクノロジーを起点にお客様の経営や事業を変革し、先端技術を用いたイノベーションの創出を支援することをミッションとしています。
デジタルを活用して経営や組織の仕組みそのものを抜本的に変えたり、新しいビジネスを生み出すために、社内の専門家たちと連携しながら、お客様の成功に向けて実行を支援していくのが役割です。
ビジネスとテクノロジーの両方の視点を持ち、成果を追求しつつ、技術をどう実装するかの現実性も踏まえて話をする。非常に面白く、手応えのある仕事だと実感しています。
──「テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ」で働くことは、キャリア形成にどんなメリットがありますか。
私たちのチームは、テクノロジーを駆使して企業変革に挑むチームなので、その素養が身に付くのはいうまでもありません。
加えて、アクセンチュアには多様なバックグラウンドと専門性を持つ人材が社内に大勢いて、お互いに教え合うカルチャーが根付いている。知りたいことがあれば、すぐ専門家にアクセスして知見を学ぶことができます。
また、日々様々な人や組織と協業するチームなので、自分とは異なる視点や価値観を吸収できるはずです。所属メンバーもInclusion & Diversityを自然と体現できている方が多く、働きやすい環境だと思います。
私自身も小学校低学年の子供がいますが、ワーキングマザーに特別配慮してもらっているという感覚ではなく、ワーキングペアレンツという立場で性別問わず共感しながら働ける今の環境はとても心地がよいです。
さらに、プロジェクトを通じてあらゆる業務やテクノロジーに触れる機会があるので、自分の世界が一気に広がります。同時にその中から「特にこの領域に興味があるので、もっと深めてみよう」といった自分の専門性を発見できる機会も多い。
このような環境で働くことで、自分の可能性と将来のキャリアの選択肢は大きく増えるはずです。少しでも私たちに興味を持っていただけたのであれば、ぜひ仲間になっていただきたいと思います。
構成:塚田有香
編集:君和田 郁弥
デザイン:砂田優花