2021/3/16

【急成長SaaS】僕は「どぶ板営業」に終止符を打つ

NewsPicks BrandDesign Editor
新型コロナウイルスは、企業のマーケティング戦略にも大きな影響を与えた。対面での営業活動がままならないなか、いかに新しい顧客との接点を生み出すか。その第一の答えがデジタルマーケティングにあるが、ツール導入やその効果的な活用には高度な知識が求められることもあり、二の足を踏む企業はまだまだ多い。

そんななか、中小企業を中心に全国1万6000以上の導入実績を掲げ、今、勢力を拡大するSaaSマーケティングブランドが「Cloud CIRCUS(クラウドサーカス)」だ。

なぜ、同社のプロダクトは“デジマ初挑戦”の企業からも支持されるのか。提供するスターティアラボ・北村健一代表に、デジタルマーケティングの裾野を広げる取り組みを聞いた。

加速するDX、焦る中小企業

──コロナ禍で、対面での営業活動が困難になりました。今、企業はどんな課題に直面していますか。
北村 リード獲得の頼みの綱だった展示会は開催見送りになり、テレアポをしても担当者はテレワークで不在……と、商談の機会が明らかに減少しています。
 そこで、デジタルマーケティングに活路を求める企業が増えていますが、なかなか前に進めない組織も多いようです。
 もちろんコロナ以前から、マーケティングの領域でも大企業を中心にDXが加速していました。
 しかし、全国を見渡すと、多くの中小企業が置いてきぼりになっているのが実情です。DX以前に、業務のデジタル化や、データを集めるといった基本プロセスが整っていないことも多い。
 信じられないと思う方もいるかもしれませんが、そもそもマーケティングとセールスそれぞれに専門部署があり、両者が適切に接続されている状況は、決して当たり前ではありません。
 中小企業を見ると、既存客との取引だけでやってきた企業も多く、マーケティングや営業の専任者がいないケースも珍しくない。
 コロナ禍で売り上げが落ち込み、いよいよ新しい顧客を開拓しなければ立ち行かない状況になってはじめて、どこから手を付ければいいかわからず、途方に暮れてしまっているのです。

その機能は本当に必要か

──確かに、IT化も不十分な企業がデジタルマーケティングに取り組もうとしても、ハードルは高そうです。すでに運用に乗り出していた企業であれば、それほど大きな打撃を受けずに済んでいるのでしょうか。
 そうした企業は、また別の問題を抱えています。
 高機能で高価なマーケティングツールを導入しても、うまく使いこなせなかったり、ごく一部の機能しか使っていなかったりする例がよく見られます。
 日本の企業がITツールを導入する際には、時間をかけてコストや機能を比較検討し、その導入プロセス自体が一大イベントになりがちです。
 しかし、それだけでIT化に成功したかのような錯覚に陥り、実際はほとんど活用されないまま「あれ、どうなってたっけ」という状態になっていることがある。
 導入成果や費用対効果を検証することなく、有効活用できていないツールに年・何百万円も払い続けていることも多いんです。

ツール活用の前に立ちはだかる壁

──せっかく導入した高機能なツールが、なぜフル活用されないのですか。
 答えはシンプルで、とにかく難しいからです。
 経験を積み専門知識を持ったマーケターがいる組織であれば別ですが、そうでない企業ではなかなか使いこなせない。
 現在、普及している海外ツールの多くは、過去に成功したマーケティングのパターンを自動化でき、どんな業務にもフィットさせられる自由度がありますが、そこにたどり着ける企業は決して多くない。
 たとえば、マーケティングのプロセスを自動化するMA(マーケティングオートメーション)ツールを効果的に利用するためには、まずリード獲得や受注など目指すコンバージョンにどのようなプロセスで到達するのか、シナリオを設計し、そのシナリオの各プロセスに指標を割り当て、スコアリングする初期設定が必要になります。
 ……と、聞いてもよくわからないですよね(笑)。
 このように専門知識を持たない人にとっては、使い始めるまでに大きなハードルがある。
 デジタルマーケティングの経験が浅い企業ではそもそも成功したパターンがないので、PDCAを回そうにもプランすら立てられない状態なんです。

誰でも簡単に使える「Cloud CIRCUS」

──ノウハウを持たない企業の担当者はかなり大変そうですね。
 はい。そこで私たちはこうした難しい設定や専門知識が不要で、マーケターでなくても直感的に使える安価なプロダクトを提供しています。
「Cloud CIRCUS(クラウドサーカス)」というブランドのもと、現在は8種のツールで構成されるSaaSサービスで、効果をすぐ実感できるシンプルさを大切にしています。
全サービス、有料プランは初期費用が別途かかる。利用時には要問い合わせ
──難しい設定や専門知識が不要というのは、具体的にどういうことでしょうか。
 たとえば、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の「BlueMonkey」では、Wordを使うような感覚でWebサイトを作成・更新でき、1600社以上の導入実績があります(2021年1月時点、以下同)。
 AR作成ツールの「COCOAR」ではアプリをゼロから開発する必要がなく、アプリストアへの申請が不要。簡単にオリジナルARコンテンツを作成できるので、キャンペーン施策などでの活用のハードルが低い(導入実績2000社以上)。
 5000社以上の方に使っていただいているMAツール「BowNow」では、ノウハウを詰め込んだ汎用的なテンプレートを用意し、シナリオ設計やスコアリングのプロセスを不要に。すぐ使い始められるようにしました。
 うまく稼働し始めれば、ここを変更したいといった要望も出てくるので、その際にカスタマイズできるようにしています。

業界セオリーより「ハードルの低さ」を

──先ほどのお話だと、シナリオ設計やスコアリングは、MAツールが効果を発揮するうえで肝となるのでは。
 おっしゃる通りで、我々は従来のMAツールで最も大事とされていた定石を否定したことになります。
 でもこれは、私たち自身も多くの中小企業と同様の課題に直面し、苦しみながら解決してきた当事者だったからこそ。
 というのも、当社のルーツはIT企業ではなく、OA機器販売会社なのです。
 15年ほど前には、私自身もリストを手に片っ端から電話をかけ続けるテレアポ営業をしていました。
 経験すると身に染みてわかるのですが、とても非効率ですし、リストの先には製品にまったく興味のない方もいます。
 疲弊していく仲間の姿を見ながら、この状況をなんとか打破できないかと考えたのが、ウェブマーケティングに興味を持ったきっかけです。
 当時はインターネットをビジネスに活用しようとする企業が増えた頃で、ウェブサイトを作成して情報発信し、そこからの問い合わせをリードにするのがスタンダードなウェブマーケティングでした。
 それにはまず、エンジニアが必要でしたが、販売会社にそんな人材はいませんし、大きな予算もつけられません。
 こうした企業でも簡単で安価に、情報発信とウェブマーケティングを始められるソフトを作り始めたのが、Cloud CIRCUSの出発点です。
 BowNowも、「問い合わせはたくさん来たけれど、売り上げにつながるリードとそうでないものを仕分けし、自動抽出した優先度の高い顧客から対応したい」という私自身のニーズから生まれたもの。
 営業マネージャー時代、既存の顧客管理ツールの使い勝手に納得がいかず、FileMaker(初心者向けデータベース管理ソフト)で必要な機能に絞ったツールを手作りしてみたところ、社内の仲間から「これは使いやすい」と評判になった。
 今、自分たちが本当にほしい機能を叶える、このソフトの思想が、BowNowのベースにあります。
 だから、難しい設定はいったん排除し、まずデジタルマーケティングの成功体験を積んでほしいのです。

ゼロからでも、成果を出せる理由

──まさに「マーケット・イン」で生まれたサービスなんですね。
 はい。私たち自身が超アナログな“ドブ板営業”からの脱却を目指し、ゼロからデジタルマーケティングに取り組んできた。
 最先端のテクノロジー企業じゃなかったからこそ、発見できた課題もたくさんあったと思います。
自社のサービス拡大の中で培ったノウハウを、すべてプロダクトに落とし込んできました。
 加えて、誰もが使いやすいツールの開発だけでなく、その導入プロセスにも我々の強みがあります。
 Cloud CIRCUSのユーザー企業は、はじめてデジタルマーケティングに取り組むケースも多い。ツールを売りつけて、はい、使ってみてくださいでは、不親切です。
 カスタマーサクセスという言葉がまだ一般的でなかった頃から、「導入の目的が果たされているか」「ちゃんと使いこなせているか」といったことを聞き取っては、そのギャップを埋めるための機能開発とともに、顧客を増やし・売上を増やすためのしくみを体系化して提供してきました。
 導入支援はもちろん、利用開始後も効果的な使い方についてのセミナーや個別相談を行い、手厚いサポートをしていると自負しています。
 たとえば、ある導入企業様は、そもそもこれまで新規開拓のための営業をしたことがなかった。
 マーケティングの知識も、ITの知識もほぼないなか、まずBlueMonkeyで問い合わせや資料請求のためのウェブサイトを作成していただくと、半年で800件ものリードを獲得できた。
 次は、このリードにBowNowでメールを送り、開封状況などを鑑みて優先度の高いものからアプローチしていくわけですが、この企業には営業担当がおらず、ノウハウもない。電話でアプローチするにも、どんなトークが効果的なのかもわからない。
 そこでまず我々が、BPO(業務の外部委託)でテレアポ業務を引き受け、商談を作るまでを担いました。3ヶ月で150件の商談が生まれ、今では自社でアプローチされています。

すべての人にデジタルの恩恵を

──ノウハウの提供まで行うのは、かなり手厚いですね。今後はどのような展開を考えていますか。
「シンプルで直感的に使える」基本思想はそのままに、お客様がマーケターとしてどんどん知識をつけ細かな要望が増えても、常にやりたいことが叶うツールとして機能開発を進めていきます。
 ラインナップにも、チャットボットとカスタマーサクセスマネジメント(CSM)サービスを加え、10種に拡大。
 現在はサービスごとに異なるIDを統合し、ひとつのSaaSプラットフォームとしての連携を強化しています。
 それにより、Cloud CIRCUSは、無料で気軽にポチっと始められ、本当に必要な機能だけを有料使いしていただく「デジタルマーケツールのアプリストア」のようになっていきます。
 今、マーケティングの重要性は増す一方で、もはやプロダクトそのものの魅力より、マーケティングの質が売上を大きく左右する時代。
 しかし本来は、良いモノや優れたサービスが正しく評価され、拡がっていく世界であるべきです。
 キラリと光るプロダクトを持つにもかかわらず、売り方のノウハウが足りずチャンスに恵まれなかった企業でも、デジタルの力を駆使すれば、その価値をちゃんと理解してくれる人に情報を届けることができます。
 企業規模や資金力・所在地にかかわらず、成果を上げられるようになる。
 同じようなものを一斉に作って競争するのではなく、多様化するニーズに応え、とがっていても感動を生むプロダクトを作り出す企業が増えれば、社会はもっと豊かになると思うんです。
 難しいツールや高価なツールを使いこなせず、「やっぱりデジタルマーケティングなんて無理だったね」と諦める結果にだけは、絶対になってほしくありません。
 一部の大企業だけでなく、全国すべてのあらゆるビジネスがデジタル化の恩恵を受けられる社会の実現に向け、私たちが果たすべき役割は、より拡大していくと考えています。