2021/3/22

【事例続々】最短1時間半でアプリ完成。超簡単ノーコードツールはココが違う

NewsPicks, Inc Chief Brand Editor
DX(デジタルトランスフォーメーション)はコロナ禍によって加速し、企業に例外なく変化を迫っている。とくに現場で働くフィールドワーカーにとっては、物理的な制約が強まったため急務だ。その変革を手助けするツールとして大きな注目を集めているのが、「ノーコード」だ。エンジニアでなくても簡単でスピーディにシステム・アプリを開発でき、現場のDXを支援するという。この強力な武器の真価を、この分野に以前から注目している国産ベンダーのインタビューと事例をもとに紐解く。

DXの盛り上がりとノーコード

人材不足や競争激化など、成熟市場を生き残る術として全社的なDXの必要性は長年説かれている。
 とはいえ、大がかりな変革や膨大なIT投資を要するようなイメージが先行し、なかなか本質的なDXが進んでいない状況であったが、2019年から現在にかけて、潮目は大きく変わった。「働き方改革」に強制力が生じ、さらにコロナ禍が従前の「当たり前」を覆し、取り組まざるを得ない状況へと追い込んだ。
 とくに、コロナ禍が私たちに迫るニューノーマルへの変革圧力はすさまじく、スピーディかつアジャイルにテクノロジーを駆使しなければならなくなった。従来のようにシステムやツールを導入するのに、数カ月、あるいは年単位の時間をかけている余裕はない。
iStock/metamorworks
 そこで今脚光を浴びているのが、ITエンジニアでなくても扱えるノーコードツール。業務アプリケーションをスピーディかつ低コストで開発可能で、現場レベルでも身の回りの業務を自らデジタルで変えていく武器として期待される。
 米調査会社ガートナーの予測によれば、業務アプリ開発におけるノーコードの割合は、2024年までに65%以上を占めるようになるという(ローコード含む)。
 このトレンドを見越し、テックのグローバル大手の動きは活発だ。Googleは昨年1月、ノーコードでモバイルアプリを開発できるプラットフォーム「AppSheet」の買収を発表。Amazonも6月、同社のクラウドサービスAWSにノーコードツールのAmazon Honeycodeをラインナップした。今後さらに注目を集める分野になるのは間違いなさそうだ。

「ジャパン ノーコード」の老舗

日本勢も実は負けていない。「ノーコード」という言葉がまだない1990年代後半から、ノーコードをコンセプトにした製品を手がけてきた、いわばノーコードの老舗が存在する。それが、アステリアという企業だ。
 アステリアは、1998年に設立したソフトウェアベンダー。主力のデータ連携ソフト「ASTERIA Warp」ほか、さまざまな業務支援ツールを開発・提供しているが、全プロダクトに共通して言えるのが、「専門的な知識がなくても使える」というコンセプト。
 さまざまなノーコードツールを手がけてきたが、中でも今ニーズが強まっているのが、モバイルアプリをノーコードで作成できる「Platio(プラティオ)」だ。2017年に発売され、キーフレーズは「あなたの業務、3日でアプリに」。今、爆発的に伸びており、問い合わせ件数は昨年同時期に比べて約5倍、売上は3倍に伸びたという。
 同社でネットサービス本部営業部シニアマネージャーを務める栁谷理恵氏はこう語る。
今、多くの日本企業に足りないのは、現場のDXだと思います。現場のDXとは、セールスでもマーケティングでも職種を問わず、現場の第一線、フィールドワークのデジタル化を通して業務プロセスを改善すること。まだまだアナログ業務が多く、また、デジタルしているExcelでの業務も、転記や手作業をともない、実質的にはアナログと変わらない非効率な場合も少なくないでしょう」
 そしてこう続ける。「なぜ進まないのか。それは現場のDXは、経営に与えるインパクトが把握しにくく、IT投資の優先順位とすると、低くなりがちだから。また投資してくれたとしても、IT部門の方はその現場を100%理解するのは難しく、結果的に現場の要望に添ったツールができなく使われない、という事象が起きてしまっているのも原因でしょう」。
 現場のことは、現場が最もわかっている。だから、現場にいる人がその業務を支援するツールを作るのがもっとも合理的――。それなら、開発スキルがなくても作れるフィールドワーカーのためのノーコードツールがあれば現場のDXを強力に推進できる。これが、Platioが生まれた背景だ。
ネットサービス本部マーケティング部の大野晶子氏はこう付け加える。
「小さいかもしれませんが、課題は現場にたくさん落ちています。それを一つひとつ解決していくことがDXの第一歩になると思います。まずは現場から始めてみる。それが、今私たちが訴えたいコンセプトです」

「現場のDX」を実現するノーコード、5つの特徴

では、Platioとはどのようなツールか。重視した要素は3つだという。それが、「モバイル」「低コスト」「スピード」
 前提として、フィールドワーカーが簡単にいつでもどこでも利用できるようなモバイルアプリの開発に特化していること。
 通信環境が整備されスマホが普及した今、業務報告や連絡事項などはPCを使わずスマホを活用してその場でリアルタイムに行えることが多い。しかし、今だにPCを中心にそのような業務を行っている企業やビジネスパーソンも少なくない。
 この要因の1つとして、モバイルに最適化されたアプリが少ないことがあるとアステリアは位置づけ、プロダクト設計で重視した
 そして、2つ目が部門内予算でも手軽に導入できるように、少額のサブスクリプションにしたこと。提供形態は月額で初期費用はゼロ。メニューは3つ用意しているが、スタンダードモデルであれば月額2万円から利用できる。
3つ目が、何よりスピーディに開発できること。この3つを重視した。そのうえで、具体的な特徴・強みはこうだ。
Point 1 とにかく簡単、“3日”でアプリ
 クラウドサービスのため、サーバーの調達やセットアップ等は不要。管理者は、ウェブブラウザで動作する管理ツール上でテンプレートを選ぶだけで、アプリのベースを自動作成。
 マウス操作で項目を並べ替えるなど、自社業務に合わせて項目や見た目を設定すればアプリが完成し、ボタン一つで配信できる。完成後も、ユーザーのリクエストや改善提案を容易に盛り込める設計で、PDCAを回し、アプリを簡単にアップデートできる。
 ユーザーはApp StoreやGoogle Playからダウンロードしたアプリにログインするだけで、すぐに利用できる。AppleやGoogleへの申請なしで利用できるのもスピーディに展開するうえで効果的な要素。
Point 2 100 種以上のテンプレート
 さまざまな業種特有のテンプレートや、汎用的な業務に対応したテンプレートを標準で提供。新たなニーズに応じて随時追加しており、新しい生活様式に対応したアプリも好評だ。
 実はこの100種類のテンプレートを用意したのが2019年でこれを機にユーザー数が激増したという。「アプリを作りたいと思っても、何から着手していいのかわからないがお客様の本音でした。そこで、業界ごとに求められる業務アプリのひな形を用意して、それをお客様がカスタマイズできるようにしたところ高い評価を得ました」(大野氏)。
テンプレートの一例。業種・業界ごとに汎用的なアプリのひな形を100種類以上用意。今後も拡充予定だ
Point 3 モバイルファーストな機能性
 モバイルに特化して構成されたアプリ画面は誰でも迷わずに操作でき、選択肢などの入力補助で操作も簡単。写真や動画のほか、モバイルデバイスが持つ位置情報などの自動入力も可能だ。また、カメラを使ったQRコードやバーコードの読み取りにも対応する。
さらに、電波の届かない場所でもスムーズに入力できる。データは端末に暗号化して保存され、オンラインになった時に自動同期する。
Point 4 管理者向けデータ活用機能
 管理者にとっては扱いやすいPCで、ブラウザからデータの一覧やグラフを確認可能。チャットツールとは異なり、フロー型ではなくストック型で情報を蓄積することでき、欲しい情報に迷いなくアクセスできる。またデータは、写真などの添付ファイルとともに、CSV形式やExcel 形式に一括でエクスポートし、別の分析ツールやシステムで活用できる。
Point 5 リアルタイム検知
 ユーザーが入力したデータが設定の「しきい値」を超過すると、管理者に自動で通知。重要な情報や「いつもとの違い」を見逃さない。例えば「検温レポートアプリ」の標準設定では、体温が37.5度以上なら管理者のスマートフォンにポップアップ表示される。

The Case Study〜現場のDXに成功した3社〜

 こうしたPlatioの特徴によって、現場のDXを実現する企業は続々と誕生している。すでに多くのユーザーがそのメリットを享受しているが、利用企業はどんな課題解決のためにPlatioを利用しているのか。ここでは3つの事例を紹介する。
CASE 1 京セラ 巨大倉庫の「棚卸しアプリ」を1日で作成
素材から始まり、エレクトロニクス、ヘルスケアなど幅広い領域で事業を展開する京セラ。全国でおよそ40万点の商材を保管する物流倉庫は、大きいものだとサッカーコート2面以上と巨大だ。
そこで毎日行われている棚卸し業務は従来、紙のリストを使用していたという。紙の受け渡しのために広大な空間を移動する負担の大きさは、想像に難くない。また、在庫照合は目視のため人的ミスも発生しやすく、在庫精度に課題も。
何らかの手だてを必要としていた中、ある日、新入社員から「棚卸用のアプリを作れないか」との意見が上がったという。そこで導入したのがPlatioだった。実際にアプリを作ってみると、3日どころか1日もかからず作成し運用を開始した
 作成されたアプリは使い勝手の良さから全国の拠点への展開が始まり、さらに棚卸し以外にも活用の幅が広がっている。たとえば、壊れた荷物の報告を写真送付と電話で行っていたが、これをアプリで完結させる動きもある。この他にも、多様な業務でモバイルを活用して“物流テック”をボトムアップで進めているという。
京セラの取り組みを詳説した事例コンテンツはこちら
わずか1日でアプリを作成。現場の業務プロセス改善に成功した
CASE 2 松屋 「食品衛生管理アプリ」を2日で作成
 老舗百貨店の松屋が、特に課題を抱いていたのは、食品売場の管理だ。まずは、信用や顧客の安全に関わる食品表示シールの記載ミス削減や確認業務の効率化を目指し、食品表示チェックアプリの作成に着手した。
 プロトタイプの作成に要したのは、わずか2日。売場の要望に応じた修正期間を含めて5日でアプリを完成させ、現場での運用を開始した。
 このアプリは、売場担当者が食品表示シールを撮影すると、衛生管理者にプッシュ通知が送られる。衛生管理者は、すぐさま報告内容をチェックし、記載ミスがあればアプリ上で修正し指示を出す。対応状況もアプリで共有される。これにより、対応が迅速化するとともに、現場の移動も削減できた。
 管理が紙からデジタルになったことで、データ活用も進んだ。履歴分析でナレッジを共有してミスを削減したり、衛生管理品質の均質化したりする成果につながった。さらに、新しい生活様式に対応する非接触での業務も実現することができた。
CASE 3 クラシック わずか1.5時間で「冷蔵倉庫状況確認アプリ」
 輸入切花専門商社のクラシックは、商品を適切な温度で管理するための巨大な冷蔵倉庫を持つ。同社では、冷蔵倉庫を効率的に利用するため、格納状況や占有率などの情報をチャットで共有していた。
 だが、時間の経過にともない情報が埋もれてしまうことや、確認したい情報までたどり着くのに時間を要することが課題だった。また、データ管理のために、Excelに転記する手間も生じていた。
 そこでPlatioを導入し、稼働状況や占有率を冷蔵倉庫ごとに確認できる「冷蔵倉庫状況確認アプリ」を、わずか1.5時間で作成した。
 このアプリでは、高い稼働率が登録された際にはプッシュ通知を送り、情報の優先度に高低を付けアラートを見落とさないように工夫した。また、報告データが蓄積されるため、倉庫スペースの効率的な運用と長期的なデータ分析が可能になった。
 機密性が高く広大な倉庫内は電波不良であることが珍しくないが、オフライン対応しているPlatioなら、別途Wi-Fi環境の整備も不要で、すぐに運用を開始できた点も見逃せない。
 同社ではさらに工夫を重ね、冷蔵庫内を視覚的に把握できるよう、動画や写真も添付できるようにした。数字では稼働率が高い場所でも余裕があるケースもあり、スペースの有効活用に活かせているという。

現場のDXから全社規模のDXへ

Platioによって「現場の現場による現場のためのDX」を実現している企業が続々と登場している中、栁谷氏は単純なDXだけではない効果も語る。
「あえて若手社員にPlatioでのアプリ作成を求める企業も増えています。ノーコードはコードを必要としませんが、業務の内容とプロセスを整理して課題と解決方法を見つけ出すという思考力が必要。アプリを開発しようとすると自然とこの力が養えるので、人材の育成にも貢献するという副次的効果もあります」
また大野氏は、「3日でアプリが作れることを実感してもらえると、頭のなかにPlatioの活用用途がどんどん広がっていきます。当たり前だと思っていた手間も、実は改善できるものだと気づく。自分の意思が反映され、実際に業務が改善すれば、仕事に張り合いが出て、さらなる改善意欲も湧いてくるものです。その結果、アプリづくりに限らず、現場から改善意見が出やすくなったという声もいただいています」と語る。
現場のDXを低価格、スピーディに実現するだけでなく、人材の育成や現場の発信力の強化にも貢献するノーコード。プログラミング不要などの表面的な価値だけでなく、ノーコードは企業のカルチャーを変える力をも備えているのかもしれない。その意味でも、ノーコードによる現場のDXは大いに価値がある。
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