[ニューヨーク 4日 ロイター] - 市場では、米国債利回りの上昇を受けて、連邦準備理事会(FRB)の次の一手に注目が集まっている。

FRBのパウエル議長は4日、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙主催の会議に出席する。

市場関係者は、パウエル議長が先週の国債利回り急伸に懸念を示すかに注目するとみられるが、FRBが具体的な対策を講じるハードルは高いとの見方が多い。

パウエル議長が公の場で発言するのは、今月16-17日の連邦公開市場委員会(FOMC)前で最後となる。

バンク・オブ・アメリカの米金利ストラテジスト、メガン・スワイバー氏は「状況を注視しているといった発言が出るだろう。どのような追加対策を検討しているのか、具体的にはっきりと示すことはないとみられる」と述べた。

同氏は、FRBが長短金利差の拡大に対処するかに特に注目しているとし、ツイストオペが「実に最適な解決策」になるとの見方を示した。

ツイストオペは、国債買い入れを長期債にシフトする手法で、1960年代初期に活用された。当時、FRBは景気後退からの脱却を目指し、短期債を売却する一方で、長期債を購入した。

2011年にも、短期金利をゼロに抑制した上で、資産買い入れを通じて長期金利を引き下げた。

<高いハードル>

ただ、FRBの介入のハードルは高いとみられている。

パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のポートフォリオマネジャー、エリン・ブラウン氏は「実質金利の絶対水準は依然として非常に低い」と指摘。

「確かにちょっとした売りは出たが、FRBから見れば、先週の金融状況は大半の期間で基本的に変化していない」と述べた。

国債利回りの上昇は、企業や個人の借り入れコスト増大につながり得るが、このところの上昇傾向は、景気見通しの改善を反映したもので、FRBの政策が奏功している証拠と考えることも可能だ。

米10年債利回りは先週、1年ぶり高水準の1.614%まで上昇した。

スタンダード・チャータードのストラテジストは3日のリポートで「経済情勢や金融市場の状況が悪化すれば、ツイストオペが再導入される可能性はあるが、そうした悪化を示す形跡は乏しい」との見方を示した。

また、FRBは必要不可欠な場合を除き、介入しない公算が大きいとの見方もある。

ジャニー・モンゴメリー・スコットの債券担当チーフストラテジスト、ガイ・ルバス氏は「最小限の対応で成果を出すというのがFRBの一貫した主義だ」と述べた。

FRBのブレイナード理事は2日、利回り上昇について、秩序のない状況になった場合や、金融状況が持続的に引き締まる場合には懸念すると発言した。

ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略担当ヘッド、スバドラ・ラジャパ氏は、リスク資産が値崩れすれば、FRBが利回りの引き下げを急ぐかもしれないとした上で、「今回のタントラム(かんしゃく)は非常に局地的で、債券市場に限られているようだ」と指摘した。

<海外勢が購入も>

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの債券担当グローバルヘッド、ジーン・タヌゾ氏は、投資適格級の信用スプレッドに注目。スプレッドがワイド化すればFRBが懸念を強めるだろうが、「それまではそのようなことはないだろう」との見方を示した。

INGバンクによると、米財務省は今年4兆ドル近い国債を発行するため、利回りに一段の上昇圧力がかかる可能性が高いと分析している。FRBの月間買い入れ額は現在、総額1200億ドルだ。

インキャピタルのチーフ・マーケット・ストラテジスト兼シニアトレーダー、パトリック・リアリー氏は「FRBが対策を講じなければ、供給は増える一方で、まさしく時間の問題となる」と述べた。

もっとも、米国債の魅力は相対的に高く、海外勢の旺盛な需要で、最終的に利回りの上昇が抑えられるとも考えられる。

PIMCOのブラウン氏は「1.75%、2%という水準に達すれば、非常に旺盛な需要が出てくるだろう。そうなれば長期金利の上昇は抑制される」と述べた。

(Kate Duguid記者、Gertrude Chavez-Dreyfuss記者)