[ロンドン 3日 ロイター] - 英国のスナク財務相は3日、予算演説を行い、新型コロナウイルスの打撃を受けた経済を立て直すため、雇用支援策などを延長すると発表した。同時に、2023年に法人税率を約半世紀ぶりに引き上げる方針も示した。

スナク氏は、欧州で新型コロナのワクチン接種が順調に進んでいることから、国内経済は当初の想定よりも半年早い22年半ばまでにコロナ危機前の水準に戻るとの見通しを示した。

ただ、今後も国内総生産(GDP)比3%程度の経済への影響が予想されるため、650億ポンド(910億ドル)の追加景気対策が必要だと説明した。

景気を下支えするため、一時帰休労働者や自営業者への支援を9月末まで延長する。小売りや接客業、娯楽関連企業の固定資産税控除も6月末まで延長する。住宅購入者を対象した減税措置も継続する。

スナク氏は「コロナ危機に際し、国民と企業を支援するため引き続き必要なことは何でも行う」と表明。その上で「回復が軌道に乗れば財政再建に着手する必要があり、そのための計画について率直に話をしたい。今回の予算案は将来の経済の立て直しに向けた手始めになる」と語った。

法人税率は23年に現行の19%から25%に引き上げる。スナク氏は、政府がコロナ対策として企業に1000億ポンド超の支援を行っていることを考えれば増税は妥当と指摘。法人税率は引き上げ後も主要7カ国(G7)中で最も低いほか、最高税率が適用される企業は全体の1割程度にすぎないと述べ、理解を求めた。

<借り入れ予想を上方修正>

21/22年度の政府借り入れは2340億ポンドと、GDP比10.3%になるとし、当初予想の1640億ポンド(同7.4%)から大幅に引き上げた。

英債務管理庁(DMO)は今後1年2960億ポンドの国債を発行する計画。これは、ロイターがまとめた市場予想の2470億ポンドを大幅に上回る。

モルガン・スタンレーのエコノミスト、ヤコブ・ネル氏は「英国の財政規律は今までよりも緩み、投資に一段と焦点を当てるスタンスになった。こうした状況は米国やユーロ圏加盟国と同じだ」と説明した。

英予算責任局(OBR)の経済見通しは、21年のGDPが4%増と、昨年11月の5.5%から下方修正された。22年、23年、24年はそれぞれ7.3%増、1.7%増、1.6%増。20/21年度の財政赤字は対GDP比で17%と、当初の19%から引き下げられたものの、依然として高止まる見込み。21/22年度は10.3%。

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