水野文也

[東京 1日 ロイター] - 日本銀行の株価が1日、ストップ高を付けた。ジャスダック市場に上場している日銀株は正確には株式ではなく政府が55%出資する出資証券だが、1980年代のバブル期には最安値から40倍以上の上昇を記録した経緯があるだけに、直近の急騰は金融相場を象徴する動きとの見方も出ている。

1日の日銀株は前営業日比5000円高の3万3000円を付け、値幅制限いっぱいのストップ高となった。動意づいたのは先週の後半。日経平均が1202円安となった2月26日には逆行高となり、昨年6月17日以来、約8か月ぶりに3万円を一時回復した。

ここまでの日銀の株価は、年初の1月5日に昨年来安値2万4610円を付けて80年代のバブル後最安値を更新。その後も日経平均が3万円を回復する中でも、チャート上ではどん底の水準に放置されていた。

目立った材料は見当たらないものの、1つの見方は「好業績の出遅れ銘柄」という点だ。日銀の業績は、今年度上期には株価上昇によるETF運用益の増加から、最終利益にあたる当期剰余金が9288億円と過去最高水準を記録するなど空前の好決算となった。個別銘柄として捉えるのであれば、「最出遅れ銘柄」といえる存在となっていた。

ただ、日銀は、一般的な企業の評価とは異なり、業績を投資尺度とする株価判断の枠外にある存在ともいえる。

ある市場関係者は「バブル期には4年間で株価が40倍になった経緯があり、昔を知る投資家にとっては投機対象の1つとして認識されている」(国内証券)と話す。

日銀株は84年の8月に付けた上場来安値1万8000円から88年12月の上場来高値75万5000円の上場来高値まで約41倍に上昇した。

前週は時期をほぼ同じくして、東証1部ではランドが物色されるなど超低位株が人気を集め、米国のゲームストップ株のような投機的な動きが目立った。足元の株式市場は世界的に調整的な動きとなっているが、日銀の株価動向はマネーゲーム的な色彩が強いとの見方が出ている。

東海東京調査センター・シニアストラテジストの中村貴司氏は「日銀株を投資対象として超低位株と同列に論じるのははばかられるが、一般の投資尺度で語れない銘柄だけに、過剰流動性によって引き起こされた金融相場を象徴する動きとみることができる」とした上で「バブルの要素が株式市場のいたる所で散見できるようになってきた」と指摘する。

日銀株は流動性が極めて低い銘柄で、きょうの相場においても、最低売買単位である100単位の売り注文が並ぶ薄い売り板を駆け上がった。そのため、前出の市場関係者は「個人投資家の値幅取り狙いの動きの1つとみることもできる」と分析している。

(水野文也 グラフ作成・編集:伊賀大記)