(ブルームバーグ): 暗号資産(仮想通貨)の信者たちや、「ミーム」株トレーダー、そしてイーロン・マスク氏のファンたちに、ヘッジファンドの巨人ポール・シンガー氏は一日も早く言いたい言葉がある。「それ見たことか」というせりふだ。

運用資産420億ドル(約4兆4800億円)規模のエリオット・マネジメントを率いるシンガー氏(76)は、「これ見よがしと並べられた」過熱の数々はいずれ投資家を呪いに戻ってくると、顧客に宛てた書簡で痛烈な一撃を加えてみせた。米連邦準備制度理事会(FRB)の緩和政策は惨めな結末を迎えると、かねて警告してきたシンガー氏にとって、最近の出来事は少々限度を超えていたようだ。

「頭を抱えたくなるような狂乱ぶりが今の米国株式市場にまん延していることは、後になってはっきりするだろう」と同氏は1月28日付の書簡で嘆いていた。

シンガー氏の見解では、米金融当局が繰り返す量的緩和に、新型コロナの打撃から経済に回復を促す数兆ドル規模の経済対策が加わり、転落の舞台はできあがっている。手に負えないインフレにショックを受けるのは政策当局者だけではなく、株式運用者や債券投資家も一緒だ。

「『前方にトラブルあり』の警告が出ているのは、次のようなものが珍しく重なったからだ。質の低い証券と極めて高いバリュエーション指標、レバレッジ過剰の資本構造、誠実な利益を出せる企業の不足、大抵のアクティブトレーダーは理解力が絶望的に欠如しているという状況、そして『買いだ、買いだ』と騒ぐ者どもが思っているほどマクロ経済の見通しは明るくないという事実だ」とシンガー氏は論じた。

原題:Eager to Say ‘I Told You So,’ Paul Singer Warns of Trouble Ahead(抜粋)

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