2021/3/5

【3.25】「宇宙ビジネスを創る」ためのマストを学ぶ1Day

 昨年11月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙飛行士の野口聡一氏が、米民間企業スペースXが開発した宇宙船「クルードラゴン」運用初号機に乗り込み、国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在任務に就いた。
 民間企業の宇宙進出は、もはや「遠い未来」のビジョンではない。日本においても大企業とベンチャーとを問わず、多種多様な企業が「宇宙」をフィールドとした事業創出にチャレンジし始めている。
 人類の新領域に挑むビジネスパーソンに向けて、NewsPicks LIVEは3月25日に「宇宙ビジネス創出BOOTCAMP」と題し、JAXAと共催で宇宙での事業創出を学ぶオンラインイベントを開催します。
INDEX
  • 新たな事業領域としての「宇宙」を知る
  • 宇宙ビジネスの先駆者が集うセッション
  • この5年で激変した民間宇宙開発の環境
  • 人類の「宇宙世紀」はもう始まっている

新たな事業領域としての「宇宙」を知る

宇宙ビジネスの先駆者が集うセッション

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「宇宙でビジネスを行う」は遠い未来のビジョンではない。すでに多くの企業が宇宙に参入し、新たな可能性の開拓をスタートさせている。本イベントにて基調講演セッションに登壇する石田真康氏(一般社団法人SPACETIDE 代表理事兼CEO)に、宇宙ビジネスをとりまく状況について聞いた。

この5年で激変した民間宇宙開発の環境

──スペースXの開発した宇宙ロケットがISSへの有人飛行に成功し、アマゾンも数千機の衛星を打ち上げる計画を発表するなど、最近はメガベンチャーによる宇宙事業のニュースを多く目にするようになりました。
石田 ジェフ・ベソスやイーロン・マスクたちが宇宙で起業したのは2000年前後ですが、その頃からアメリカでは宇宙ビジネス開発が盛り上がっています。
 2020年現在、宇宙ビジネスの市場規模は全世界で約40兆円。過去10年間、右肩上がりでじわじわ伸び続けており、2040年頃には100兆〜150兆円規模にまで拡大すると予測されています。
──民間の宇宙進出はまだまだ先の話かと思っていましたが、日本でもここ数年で、宇宙ビジネスに参入する企業が急速に増えています。
 かつて宇宙活動は国家的プロジェクトでした。政府が税金を投入して、宇宙機関が研究開発を行い、大手航空宇宙企業などが参画する。われわれ一般人は憧れをもってニュースで見るだけ、という距離感だったと思います。
 しかし、アメリカには遅れたものの、日本では2015年以降、宇宙ビジネスを取り巻く環境が劇的に変化しました。日本のビジネスパーソンにとって、宇宙は「ニュースで見るもの」から「プレーヤーとして関われるもの」に変わったのです。
 いくつか理由があって、ひとつは政府が民間の宇宙ビジネスを振興するための政策を打ってきたこと。私自身も2014年から政府の委員会に参加していますが、そこで議論されてきたテーマが次々と実現されています。
 また、産業革新機構や日本政策投資銀行(DBJ)といった政府系ファンドやベンチャーキャピタルが中心となり、宇宙ベンチャーにしっかりした投資が入るようになりました。それに呼応する形で、日本でも宇宙ベンチャーの数が一気に増え、すでに50社以上になります。
 そういった宇宙ベンチャーや宇宙ビジネスに投資したり、何らかの業務提携を行っている大企業も激増し、すでに100社を超えています
 誰もが知るような企業が「JAXAと提携した」「宇宙ベンチャーを買収した」といった話があちこちで聞かれるようになったのが、まさにこの5年で起きた変化です。
「SPACETIDE」は民間による日本最大規模の宇宙ビジネスカンファレンス。参加企業は増え続けている
──石田さんはコンサルタントとして、また「SPACETIDE」代表理事としてさまざまな企業の宇宙ビジネスを支援されています。事業領域としての「宇宙」の特殊性とは?
 まず、宇宙ビジネスには大きく分けて2種類があります。ひとつは「宇宙に行くビジネス」、もうひとつは「宇宙に行かないビジネス」です。
 前者については、おっしゃるとおり確かに特殊です。具体的には、宇宙に行くのが物理的にものすごく大変だということ。
 宇宙ステーション(ISS)は地表から高度400kmの位置を飛んでいますが、400kmって直線距離なら東京〜大阪より近い。にもかかわらず、「地球の重力を脱する」ことに猛烈なエネルギーが必要なため、宇宙に行ける回数やコストに制約があるわけです。
──われわれは地球に魂を縛られている。
 その問題をクリアすることが、現在のトレンドのひとつです。例えるならば、IT革命におけるナローバンド時代に近い感覚ですね。ダイヤルアップで回線をつないで、ゆっくりデータを送る間にどんどん課金される。大きなデータを送るための“土管”がない。
 そこで、イーロン・マスクやジェフ・ベソス、日本では堀江貴文さんたちがやろうとしているのが、宇宙への“土管”を大きく太くして、ブロードバンドを通そうとしているわけです。
 宇宙に行きたい人がどんどん行ける。衛星を打ち上げたい人がどんどん打ち上げられる。そのコストが今より1〜2桁下がるとなったら、みんながチャレンジするじゃないですか。
──なるほど。宇宙に“土管”を通すチャレンジがまさに進められている。
 加えて、これもインターネット革命に例えると、そこに乗せるための「サービスやアプリケーション開発」も同時並行的に進んでいます。
 2000年代に生まれたアメリカの宇宙ベンチャーは大半がロケットや宇宙船をやってる。宇宙に行くための土管を太くするところにフォーカスしている企業が多いんですね。
 一方、いずれ打ち上げのコストが安くなって、もっと宇宙へ行きやすくなったら、「宇宙旅行に行けるんじゃない?」「宇宙空間でロボット作ったらどうなる?」という風に色々なアイデアが生まれて、そこに先行して起業するベンチャーが出てきた。
 まだブロードバンドは通っていないけど、それを見据えて動き始めているプレーヤーがどんどん増えているんですね。

人類の「宇宙世紀」はもう始まっている

──一方で「行かないビジネス」の状況はどうでしょう。
 簡単に言えば「宇宙データを活用する事業」のことですが、ハッキリ言って、こちらは特殊性はほとんどないんです。
 宇宙から来る信号は、大別すれば①位置情報(GPSなど)②衛星データ通信(飛行機内でのWi-Fi利用など)③衛星画像(天気予報など)の3種類です。
 そのどれもが、すでにわれわれの生活にとって欠かせない社会インフラといえるものです。
 GPSや一部衛星画像以外のデータは利用するのにコストが掛かりますが、日本でも衛星画像データプラットフォームを提供している「Tellus」のようなサービスが、すでに2万人以上のユーザーに使われています。
 海外ではAWSがこの領域に莫大な投資をしており、必要なデータをAPI連携で取得できる環境が整ってきています。
 そして、数千機の通信衛星を打ち上げて、地球規模でのインターネットアクセス網をつくるプロジェクトも進んでおり、今後も衛星の数が増えるにつれて、取得できるデータの数はどんどん増えていくでしょう。
 そのコストが下がるほど、衛星データはコモディティ化していき、企業にとって活用することが「普通のこと」になっていくでしょう。
▼CHECK
「SPACETIDE 2021 Spring」は本イベントの直前、3/23~24の2Daysで開催予定です。→詳細はこちらから。
──つまり、参入コストが十分に低下したとき、全人類にとっての「宇宙時代」が始まる?
 そうですね。まだ下がりきってはいませんが、宇宙に行くコストが安くなり、衛星のコストが安くなり、データのコストが下がる。すべて繋がってるわけです。
 およそ100年前、モータリゼーションという新時代を人類が享受するときに、新たな移動インフラとなる「T型フォード」を作ったフォードが偉大なる実業家になりました。
 そして、人類が宇宙時代、新たな宇宙世紀に突入しようとしているのが、今この瞬間だというわけです。
──そこで日本企業にはどんなオポチュニティがあるのでしょうか。
 日本の宇宙プレーヤーの面白さは、海外に比べて各社ごとに興味がバラバラという点ですね。ベンチャーはもちろん、大企業もまったくバラバラな業界から宇宙に参入してきています。
 例えば自動車メーカー、電機メーカー、商社、航空会社、通信企業、素材メーカー、広告会社、旅行代理店、ゼネコン。とにかく業種が多様、ビジネスも多様です。
 マンガやアニメの影響もあるかもしれませんが、面白いですよね。まだまだBtoBの事業が中心ですが、今後はBtoC企業の参入も増えてくるでしょう。あらゆる領域のプレーヤーが宇宙に進出できる日が、もう間もなくやってきます。
 個人的には、新しい宇宙時代には新しいヒーローが次々生まれると思っています。かつてのフォードが、いまはイーロン・マスクであれば、次のヒーローはどこから生まれるのか?
 そのフロンティアが、いまわれわれの前に広がっているんです。