[東京 19日 ロイター] - 経団連は19日、21年春闘に向けて経営側の指針を示す「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を公表した。厳しい経営環境の下、雇用を守ることが大前提だと強調。また、一律の賃上げは現実的ではないと指摘した。

「新型コロナウイルス感染症の拡大により経営環境が激変した」との書き出しで始まった今年の経労委報告では、労使交渉に向けて「社員の雇用を守ることの大切さを労使で再認識することが前提」との基本姿勢を示している。基本給については、収益増大企業では制度昇給の実施や賃上げ(ベア)について労使で議論し、成果による査定配分など個人の貢献度などに応じた重点化を図るなど、エンゲージメントを高める観点からの検討が望まれるとした。

一方、コロナ禍で収益状況が大幅に悪化し、回復見通しが立ちにくい企業は、事業継続と雇用維持を最優先に交渉を行うことになるとして、ベアの実施は困難であり、制度昇給などを含めて労使で検討せざるを得ないケースもあるとした。

会見した大橋徹二・経団連経営労働政策特別委員長(コマツ会長)は、賃上げについて今年も経団連が各社に呼びかけを行うのかどうかについて、「コロナ禍という世界的危機に直面している中、各社置かれている状況について労使がきちんと話し合い、各社の実情に応じて判断することになる」と回答。状況が各社異なることを踏まえて対応すべき問題だとの認識を示した。

連合が春闘闘争方針で目標とはいえ2%程度のベアを掲げていることについて同報告では「事業継続と雇用維持に向けて賢明に努力している多くの企業において、経営側はもとより、当該企業の労働組合からも共感や理解が得られにくいことが懸念される」と指摘。例年通りの賃上げ要求は到底受け入れられないとの認識を盛り込んだ。

*内容を追加しました。

(中川泉 編集:青山敦子)