ネイチャー高額掲載料の衝撃 進む学術誌オープン化
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最近は、最新の論文はプレプリントサーバー(※)で無料で読めるので、研究者の立場からすると論文のオープン化にそれほど大きな衝撃はない。物理学分野ではネイチャー誌やサイエンス誌に投稿してまだ出版が決まっていない論文でもばんばんarXivに上がっている。そのまま厳しい審査(※※)をくぐり抜け守備よく出版されるケースもあるが、リジェクトされて姉妹紙や別のジャーナルに掲載される場合もまま見られる。
それよりも、ネイチャーで去年ぐらいから始まった出版論文を審査したレフリーの氏名の公表の方が、研究者にとって意味があると思う。ネイチャー誌はいろいろな意味で影響が大きいので、レフリーの責任も大きい(大きくならざるを得ない)。また、論文の読者である多くの研究者から(ある意味)レフリーも評価される。正直、氏名公表によるアップサイドよりも、該当論文の著者らに同定されたり論文の評価が低いときに起こるダウンサイドリスクの方が大きい。なので、氏名を公表するかどうかをレフリー自身で選べる仕様になっている(経験談)。
>大場さん
ほとんどの研究者は、論文のレフリーを引き受けるときにできるだけバイアスなく審査するように心がけます。また、著者に返すレフリーレポートを書くときに単に批評をするだけでなく論文の内容が科学的により良くなるように導く努力をしています。なので、レフリーの氏名公表は該当論文に対するレフリーの貢献を評価したいというネイチャー誌の施策です。癒着の温床になるというのは誤解を招く書き方だと思います。査読制度はほぼ全ての研究者の科学に対する誠意と無償の努力で成り立っていますが、その上で解決の難しい構造的な問題があることは認めます。
>下山さん
https://www.dropbox.com/s/xeea7u3j7570oym/%E8%AB%96%E6%96%87%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9%E5%8C%96.txt?dl=0
【※】arXiv(物理学系)、BioRxiv(生物学系)、medRxiv(医療系)
【※※】Natue誌は審査が二段階あって、エディターによる一次審査で8割の投稿論文は落とされる。見ていると一次審査を通った段階でarXivに上げている論文が多いよう。
注目のコメント
個々の論文と対応させず、年間で全査読者リストの氏名公開、または通った論文のみ氏名公開、みたいなのはありますねぇ、ジャーナルによっては
そうではなく、落とされた論文の査読者の氏名公開は、高品質なシゴトをして下さる査読者の方々 (=ご自身の 品質基準が高く、そうでないペーパーを落としてくれる方々) を激減させるでしょうねぇ、ワタシの業界の感覚では
あ、落とすのは悪い理由をしっかり述べなくてはならないので、褒めて通すよりずっと能力と手間がかかるんですよ
ただでさえ論文数が近年激増して、高品質なシゴトをして下さる査読者 (とassociate editorsも) 確保がタイヘンなのに、これ以上査読プロセスの手間を増やす流れを、無報酬の人々が働くシステムに期待するのはムリがあると思いますねぇ
じゃあ、査読者に報酬をあげれば良いか、というと、財源確保は別にしても、今度は査読者を選ぶAssociate Editorのクオリティバーが上がって、適任者を探すのが大変になるでしょうねぇ
ただ、全体としては良い流れだと思いますねぇ、個々研究者の無償善行奉仕を前提にした査読システムを、私的出版会社が権威という名のもとに搾取する事が難しくなって来たのは
書く方だって、苦労して書いた論文のcopyrightを、私的出版会社に譲渡して、その会社がsubscriptionや記事のようなpublication fee で儲けるって、おかしいと思いますよねぇ
(あ、記事途中までしかヨンデマセン)
追記
あ、オープンアクセスにすると、引用数が増えるからですよ すると研究者個人の組織内での評価や、集合的には大学のランキングが上がったりします
追記終わり今回のネイチャーの取り組みと同様に、他の科学雑誌でも論文著者が希望すれば有料で掲載論文をオープンアクセス化できる雑誌はあります。ただし、ネイチャーの約120万円という掲載料は他の雑誌の数倍の価格なので驚きましたが。。
掲載論文をオープンアクセスにするかどうかは著者が選択できるのですが、これまで私がオープンアクセスを選択した時の理由は、
①論文内容の詳細を多くの人に知ってもらいたい時
②筆頭著者が若手研究者で、その後のキャリアやモチベーションにつなげたい時
が多かったです。
オープンアクセス化が進めば大学の研究者だけでなく、企業の方や一般の方でも論文を読むことができるようになりますので、論文情報が広まる速度はより早まると思いますし、そうすれば研究成果の社会実装の速度や頻度も高まるのではないかと思います。