[東京 25日 ロイター] - 総務省が25日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は2.9%で、前月(3.1%)から0.2ポイント低下し、5カ月ぶりに改善した。エコノミストからは、短期的に失業していた人たちが労働市場に戻ってきた可能性があるとの見方が出ている。ただ、11月は改善したものの、足元では新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、今後も下げ基調になるかの判断はまだできないという。

ロイターの事前予測は3.1%だった。

男性の失業率は3.2%と前月に比べて0.2ポイント低下、女性は2.4%と0.3ポイント低下した。年齢別では15━24歳が4.8%と最も高く、65歳以上が1.7%と最も低かった。

完全失業者数(実数値)は195万人で前年比44万人の増加、10カ月連続増となった。求職理由別では「勤め先や事業の都合による離職」が20万人、「自発的な離職(自己都合)」が4万人それぞれ増加した。希望退職への応募やコロナ禍における待遇への不満などが離職者増加に影響した可能性があるという。

就業者数(実数値)は6707万人で55万人減、8カ月連続減となった。宿泊・飲食サービス業で29万人、製造業で19万人それぞれ減った一方、情報通信業、不動産業・物品賃貸業、教育・学習支援業、医療・福祉などは増加し、産業別で明暗が分かれている。「特定の産業だけでなく産業全体が伸びてくるかが来月の注目」(総務省の担当者)という。

大和証券の末広徹シニアエコノミストは「『サービス業』、『非正規』、『女性』をキーワードにする、短期的に失業していた人たちが労働市場に戻ってくる動きが失業率の低下に寄与したようだ。今後、労働市場が本格的に改善してくるかは、企業収益の動向の見極めが必要になってくる」とみている。

<有効求人倍率は低水準続く>

厚生労働省が発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.06倍で、前月から0.02ポイント上昇した。上昇は2カ月連続。事前予測の1.04倍は上回ったが、コロナ前に1.5倍台で推移していたことを踏まえれば依然として低水準。事業の先行きに不透明感がある中、企業の採用には慎重な姿勢がみえる。

企業側の求人状況を示す月間有効求人数が前月に比べて3.0%ポイント増加した。政府の観光需要喚起策「GoToトラベル」が宿泊業、飲食サービス業の下支えとなったほか、製造業での生産持ち直しの動きも貢献したもよう。

一方、月間有効求職者数は1.5%ポイント増加。希望するような求人が見当たらないことなどを背景に求職者側の応募も慎重といい、就職活動が長期化していることがうかがえる。

(杉山健太郎)