[チューリヒ/アムステルダム 9日 ロイター] - オランダの高等裁判所は9日、同国の大手銀行INGグループのトップだったラルフ・ハマーズ氏が同行内で行われていたマネーロンダリング(資金洗浄)を放置した疑いがあるとして刑事捜査を命じた。

ハマーズ氏は1カ月前に、スイス金融大手UBSの最高経営責任者(CEO)に就任したばかり。UBSはマネーロンダリングと脱税を巡る不祥事からの建て直しを図っている。

UBSは、検察当局による捜査の間、ハマーズ氏が職務にとどまると発表。オランダの反マネーロンダリング問題に関する独立した評価を含む広範なデューデリジェンスをハマーズ氏の採用前に行ったと説明した。

UBSのウェーバー会長は「ハマーズ氏の当社を率いる能力を全面的に信頼している」とし、「われわれは、これらの独立した評価の結果および当時のオランダ検察の評価に十分納得している」と述べた。

スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)も、ハマーズ氏の指名審査でオランダの反マネーロンダリング問題を調査し、ハマーズ氏がUBSトップの役割に「適任適切」であることを確認したと述べた。

INGは2018年、顧客によるマネーロンダリングやその他の犯罪行為を摘発しなかったことを巡り、7億7500万ユーロ(約9億4000万ドル)を支払うことでオランダの検察と合意した。

ハマーズ氏は13年から今年6月までオランダ最大の銀行であるINGを率いた。

投資家は18年の判決が、いかなる個人にも責任を問うことができなかったとして不満を抱いていた。これが一因でオランダの高裁は9日、和解が有効であるとした上で、検察官はハマーズ氏が果たした役割を捜査する必要があると指摘。「公的な刑事訴訟では、銀行のマネジャーが禁止された行為を主導した場合、処罰されないことはないとする基準が確固たるものであることを裁判所は重要視している」との判断を下した。

新たな捜査では、ハマーズ氏がマネーロンダリング犯罪についてどの程度知っていたのか、それを止める能力がどこまであったのかが調べられることになるとみられる。ハマーズ氏にこれまでに訴追されていない。