2020/12/8

【迫真】コロナ禍で浮き彫りになったエアライン2強の台所事情

NewsPicks編集部 記者
「劣後ローンによって4000億円を調達した。財務の健全性については問題ない。(公募増資を)現時点で決めている事実はない」(10月27日のANAホールディングス・片野坂真哉社長コメント)
その舌の根も乾かぬうちの11月27日、ANAは最大3321億円の公募増資に踏み切ると発表した(最終的な調達額は3052億円)。
折しも3週間前の11月6日には、JALも1680億円の公募増資を表明している。
世界中に感染拡大したコロナウイルスによって、エアライン各社は未曾有の危機に直面している。
2月後半から世界中で入国制限が実施され、国際線の需要はほぼゼロに等しい水準にまで落ち込んだ。
エアラインのビジネスモデルは、人件費や燃料費など毎月流出するキャッシュの額が非常に大きく、飛行機を飛ばせないとお金だけが毎月出て行ってしまう。
そのため、5月には早くもエアライン倒産が始まり、タイ国際航空、フィリピン航空といった「フラッグ・キャリア」(国家を代表するエアライン)の破綻も相次いでいる。
資金不足に陥ったエアライン各社に対して、各国政府は異例とも言える支援に乗り出している。
アメリカ政府は「the CARES act」と呼ばれる総額50億ドル(5兆2000億円)の支給を3月に実施した。
ドイツ政府はルフトハンザ航空に90億ユーロ(1兆560億円)規模の資金を投じ、同社の株式20%を取得した。ほとんど「一時国有化」である。
日本のフラッグ・キャリアであるJAL、ANAの財務健全性は、諸外国に比べればかなり高い。
自己資本比率で比較すれば、ルフトハンザは14.3%、エアフランスに至っては債務超過に陥っているが、JALは43.6%、ANAは32.3%の水準を保っている(2020年9月末)。
それでも、需要の回復が遅れれば、現金の垂れ流しは続く。「キャッシュ・イズ・キング」の状況は当面変わらないだろう。
できるだけ、分厚い資金手当てをしておきたい。しかし、手かせ足かせをはめられる政府支援には頼りたくない。だからこその公募増資なのである。

「攻め」のJAL、「守り」のANA

同じコロナ危機対応の「公募増資」のように受け止められているが、よくよく調べてみると、JALとANAではかなり事情が異なるようだ。