[ワシントン 3日 ロイター] - 米議会の議員は3日、国防予算の大枠を定める国防権限法(NDAA)について、上下両院で一本化した最終法案を公表した。ドイツ駐留米軍や南北戦争で奴隷制度存続を主張した南軍指導者に由来する米軍基地名を巡りトランプ大統領の方針に反する内容が盛り込まれた。

4500ページにわたる総額7400億ドルの国防権限法を巡り上下両院の共和、民主両党は何カ月も交渉を続けてきた。米軍兵士の昇給や戦闘機および戦艦の購入数、ロシアや中国など競合国への対応などを幅広く網羅している。

法案はドイツ駐留米軍の規模維持を支持する内容となっており、国防総省が影響評価を行わずにドイツ駐留の現役兵士の数を3万4500人未満に減らす権限を制限している。

国防総省は7月に、トランプ大統領の決定に従い、ドイツに駐留する約3万6000人のうち約1万2000人を削減すると発表しており、議会が阻止に動いた格好だ。

軍撤退の期限である1月15日までにトランプ大統領が法案に署名すれば、アフガニスタン駐留米軍の規模を4500人から2500人に大幅に削減する計画も凍結され、長い時間を要するリスク評価を経て、はじめて撤退が可能になる。

議会委員会筋によると、下院は来週の早い段階で法案を可決し、上院に送るとみられる。

トランプ氏は上下両院でそれぞれ、超党派の支持で可決された先の国防権限法案に南軍の将官らの名前を米軍基地名から削除する規定が盛り込まれたため、拒否権を発動すると表明していた。

トランプ氏はまた、IT企業を訴訟リスクから保護する通信品位法230条を撤廃する規定が盛り込まれない限り、拒否権を発動するとの立場を示している。

ただ、最終案には通信品位法230条撤廃条項は入らなかった。議員からは軍事とは関係なく、重要性の高い国防権限法の成立を妨げるべきではないとの批判の声が上がっていた。

議会委員会の関係者は、年末までの議会の会期中に大統領拒否権を覆すのは難しいと指摘。拒否権が覆されなければ、60年ぶりに国防権限法が不成立となる。