2020/12/5

【風雲】ラグジュアリー・ブランドのEC大戦争が始まる

現状は「絶対王者」が不在

2015年、ラグジュアリー・ブランド・グループ、リシュモンの会長で支配株主でもあるヨハン・ルパートは、モンテカルロで開催された業界カンファレンスに登壇し、最大のライバルたちに団結を呼びかけた。
「ラグジュアリー業界の未来のために、手を組んで唯一無二の支配的で中立的なプラットフォームをつくろうと、他の大手グループに提案したのです」
南アフリカ出身のルパートは、熱のこもった口調で振り返る。「LVMHの(取締役会長兼CEOルナール・)アルノー氏とケリングの(会長兼CEOフランソワ・アンリ・)ピノー氏と話をしました」。両社はリシュモンと並んで、ラグジュアリー・ブランドの3大コングロマリットと称される。
「ラグジュアリー・リテール業界の未来がオフラインだけでなくオンラインにもあること、そして、どこか1つの企業が独占しようとするには、あまりにも大きなゲームであることを話しました」
ルパートはため息をついて続けた。「相変わらず、みんな自分たちだけでやりたがっていましたけどね」
それから5年。新型コロナウイルスのパンデミックによって、ラグジュアリー・リテールの未来におけるEコマース(EC)の重要性が、いよいよ明らかになった。
スポティファイを擁する音楽業界や、ブッキング・ドットコムを擁するホテル業界と違って、ラグジュアリー・ファション業界には現状まだ、最強のオンラインプレイヤーがいない。
(bonetta/Getty Images)

2大プラットフォームが結びつく