2020/12/4

【教養】日本人が忘れている「レアメタル」をあなどるな

NewsPicks編集部 記者
究極の「川上」は、中国の手中にある──。
半導体をめぐる米中の覇権争いが激しさを増している。アメリカは、自国製の半導体や製造装置を事実上禁輸するなど、中国に対して厳しい制裁を加えている。
中国は現在のところ、基本的には自国内で内製するしか調達方法がなく、最先端の半導体を手に入れられない状態が続いている。
こうした状況を踏まえ、テック覇権争いにおいては米国優勢という見方が大半だ。
しかし、中国には禁断の切り札がある。半導体の製造工程でも不可欠な希少金属、レアメタルだ。
レアメタルは社会のデジタル化、電動化に不可欠で、半導体やモーターに使う磁石などあらゆる分野で原料として使われている。
レアメタルがなければ、パソコンや電気自動車、データセンター、ミサイルを作ることはできない。
そして、その生産の大部分を担っているのが、中国だ。半導体や自動車の製造などに必要なタングステンの8割以上、永久磁石などに使われるレアアースでは6割以上のシェアを握っている。
もし、中国がレアメタルの輸出制限という禁断のカードを切ると、あらゆるハイテク製品のサプライチェーンは大混乱に陥ることになる。もちろん、アメリカも日本も無傷ではいられない。
米中テック戦争を最上流の原料から眺めた時、どんな地政学上のリスクが浮かび上がるのか。
NewsPicksは、かねてレアメタルの中国依存に対して警鐘を鳴らしていた『レアメタルの地政学』の著者、ギヨーム・ピトロン氏に話を聞いた。
ギヨーム・ピトロン1980年生まれ。資源地政学を専門とするジャーナリスト・ドキュメンタリー監督。パリ大学で法学修士、ジョージタウン大学で国際法修士号を取得。レアメタルと地政学について、フランス議会などに定期的にレクチャーしている。
「鉱物を制する国が世界を制する」と語るピトロン氏に、レアメタルの観点から米中覇権争いを解説してもらった。

「戦略的」に重要な金属

──2010年に中国がレアアースの禁輸を実施し日本でもその存在が知られましたが、なぜ今、改めてレアメタルに注目する必要があるのでしょうか。
私がジャーナリストとしてレアメタルに興味を持つようになったのは、「戦略的に重要な金属(strategic metals)がある」ということを知ったことがきっかけです。