[アンカラ/イスタンブール 26日 ロイター] - トルコリラはこのところ、相場の方向が定まらない状態が続いている。中央銀行の大幅利上げや政府による経済改革の約束を好感した外国人投資家による買いと、慎重な姿勢を崩さずに金やドルをため込んでいる国内投資家の売りが交錯しているためだ。

今年に入って新興国通貨の中で見劣りする値動きを続けていたリラだが、この1カ月は振れ幅が大きくなった。この先は、リラの最安値更新を回避できるかどうかが、エルドアン大統領が打ち出した市場寄りの新たな経済戦略の成否を左右する要素になる。

エルドアン氏は今月初め、中銀総裁と財務相を更迭する衝撃的な人事を断行。その後、リラは12%程度上昇した。銀行関係者の試算によると、翌週に外国人投資家が買ったリラ建て資産は50億ドル相当に達した。

しかし、今週はリラが5%下落。国内の投資家や企業が、割安と見た外貨を25億ドル相当購入したためだ。銀行関係者の話では、大手企業が増加する対外債務の返済に充てるために外貨調達に動いた可能性がある。

トルコでは外貨・金の保有高が過去最高の2280億ドルに達している。これは国民の間で、先行きが不透明な局面での安全資産として、金が好まれているのが大きな理由。今年の金の輸入は、220億ドル相当に上る。

イスタンブール金販売店協会のMehmet Ali Yildirimturk副会長は「人々は自動車や自宅を売って金を買ったり、単に手持ちの資金を金に変えたりしている」と語る。経済改革戦略が打ち出されて市場に楽観的なムードが生まれたが、改革には実際の行動が伴う必要があると付け加えた。

エルドアン氏は、2018年初め以来2度の景気悪化と50%を超えるリラ下落について長い間、海外勢と高金利のせいだと批判してきた。しかし、リラが何度も過去最安値を更新し、中銀の外貨準備が減少すると、今月に入ってこうした言い回しを軌道修正した。

<慎重な楽観と根強い不信>

トルコ当局は、海外勢への不信が広まる中で昨年導入された外貨とリラのスワップ制限など外国投資に対する規制の緩和に着手した。

ただ、中銀が数百億ドルを外貨準備として保有していることを考えると、規制緩和による変化はゆっくりしか進まないだろう。

そうした事情が外国人投資家によるリラ建て資産需要の妨げとなっており、トルコ中銀が先週、政策金利を475ベーシスポイント(bp)引き上げて15%としたにもかかわらず、ロンドンのスワップ市場におけるリラ建て資産の利回りは10.5%近辺にとどまっている。

とはいえアバディーン・スタンダード・インベストメンツの新興市場国ポートフォリオマネジャー、キエラン・カーティス氏は「トルコの政策は間違いなくよりオーソドックスな手段の組み合わせになっており、こうした変化は慎重ながらも前向きに受け止められている」と述べた。アバディーンは今月、長らく敬遠していたリラ建て資産を購入した。

カーティス氏は、12月に50bpの追加利上げが行われるのが「理にかなって」おり、そうなれば海外勢は投資意欲を保ち続けるとみている。

海外からの資金流入は、新型コロナウイルス流行で観光収入が約200億ドル落ち込んだトルコの経常赤字拡大に歯止めをかけるのに役立つだろう。

一方、格付け会社などは、トルコは金の輸入増加で貿易収支の不均衡が拡大し、対外債務不履行のリスクが高まっている、と警告する。中銀の見通しでは、年末までに今年の金輸入が240億ドルに達し、平均の2倍を超えてしまう。

トルコのある銀行の富裕層向け資産管理担当者は、6日以降に顧客に推奨されているのはリラの買い持ちだとしつつも「しかし、実際には国内勢による金と外貨の購入が、わずか2週間で40億ドルほどに達した」と明かした。

(Nevzat Devranoglu記者、Jonathan Spicer記者)