[ダブリン 26日 ロイター] - アイルランド中央銀行は、国内のリテール(個人向け)銀行に関し、隣国の英国が欧州連合(EU)と通商合意を締結しないことを既に想定した「基本シナリオ」よりもはるかに厳しいショックを吸収するのに十分な資本を全体として備えているとの分析結果を示した。

分析によると、国内銀行全体の中核的自己資本比率(普通株式等Tier1・CET1)は基本シナリオ下で現在の18.5%から12.6%に低下し、悪化シナリオでは8%になるとみられる。

悪化シナリオは新型コロナウイルス対策で今年実施したロックダウン(封鎖措置)のような混乱が来年のほとんどの期間続き、世界経済の回復が予想より緩慢となり、銀行が融資基準を厳格化して景気悪化を助長するとの想定に基づいている。

中銀は新型コロナの世界的大流行(パンデミック)に対応し、4月に景気変動の影響を抑制するカウンター・シクリカル資本バッファー(CCyB)の要件をゼロ%に引き下げた。25日には、2021年に引き上げる考えはないと表明している。

アイルランド政府は来週、6週間の厳格な行動制限を解除する予定で、小売店の営業が全面的に解禁され、他の接客業の一部も営業再開が認められるとみられる。

中銀のマクルーフ総裁は記者団に「銀行全体の対応が最終的な景気状況を決定づけることになる。銀行は緊急政策支援を活用し、企業や家計への持続可能な信用供与を継続し、景気回復につなげるべきだ」と訴えた。

中銀はまた、2021年に長期的景気循環に連動しないシステミック・リスクに対処する資本バッファーの段階的導入を開始する考えはないと説明。また、来年は3年連続で住宅ローンの貸し出し上限を据え置くとした。

国内の多くの企業の存続可能性はコロナ以前およびコロナ関連の債務を再編できるかどうかに左右されるとし、保有する現金が3カ月分の事業経費を下回っている中小企業の割合はコロナ流行下で倍増し、16%になったと明らかにした。