[東京 25日 ロイター] - マネックスグループの松本大社長は、ロイターのインタビューで、日銀が開発を進めている中央銀行デジタル通貨(CBDC)が発行されれば暗号資産(仮想通貨)とCBDCの交換が飛躍的に増え、傘下の仮想通貨交換業・コインチェックのビジネスにも「強烈な追い風が吹く」との見通しを示した。

松本社長は「仮想通貨交換業の社会的意義は変化している」と指摘。「仮想通貨交換所で蓄積され磨かれている技術やノウハウが、新しいデジタル経済の基盤となるCBDCや(基軸通貨としての性格を帯び始めた)ビットコインを管理するために重要な技術になってきている」と述べた。

2018年のコインチェック買収時、松本社長は将来的にコインチェックを上場させる方針を示していたが、インタビューでは、上場時期について具体的なコメントは避けた。

<飛躍的に上がる「インターオペラビリティー」>

松本社長は「CBDCができれば、仮想通貨のインターオペラビリティー(相互交換性)が飛躍的に上がると思われる」とみている。

コインチェックは銀行口座を有しているが、「日本でも世界でも仮想通貨交換業者はなかなか銀行と付き合いができない」(松本社長)とされ、法定通貨と仮想通貨の交換がスムーズに行われない現状がある。

しかし、潮目は変わりつつある。20日には米通貨管理庁が銀行に対し産業によって差別的な扱いをやめるよう求める規制案を公表した。松本社長は、今後「(交換業者が)もっと簡単に銀行口座を持つことができるようになる可能性が高い」との見通しを示した。

CBDCは「(日銀ネットやSWIFTのような従来のネットワークではなく)もっとデジタルネイティブなネットワークを使うようになるはずだ」と指摘。「仮想通貨とCBDCの交換がDVP(商品の引き渡しと代金支払いをリンクさせる仕組み)にできる可能性がある。そうすれば安全なので、取引量は増えるだろう」と話した。

<CBDC、デジタル経済の観点でも議論を>

松本社長は、日銀のCBDCに関する取り組み方針について「CBDCは経済的にも大変大きな影響をいろいろな分野でもたらす可能性があるし、経済安全保障にも大きな意味合いを持ってくる」とみている。「日本のような自由主義経済大国が取り組もうとしていることは大変大きな意味を持っている」と評価した。

ただ、中国のデジタル人民元を念頭に置いた経済安保の観点だけでなく、デジタル経済の観点からの検討も重要だと指摘。「デジタル経済の関係でCBDCはこうあるべきだということを、経済界がもっと議論を深めて発信していくべきではないか」と語った。

民間でもデジタル通貨の研究が進んでいるが、松本社長は「CBDCのようになろうとしているプロジェクトについては『中二階はいらない』となるのではないか」と懐疑的な見方を示した。

<ビットコインが帯び始めた「基軸通貨性」>

足元ではビットコインの価格が高騰している。松本社長は「今回の値上がりの一番大きな理由は、ペイパルが支払いをビットコインでできるようにしたことだ」とみている。

中長期的な価格上昇要因としては、各国の金融緩和のほか、ビットコインに基軸通貨としての性格が出てきつつあることを挙げた。松本社長は「ビットコインの基軸通貨性は上がりつつある。あまりにも大きいから改ざんがほぼ不可能。設計が上手にできている」などと指摘した。

米フェイスブックの「リブラ」構想を巡り、マネックスはリブラ協会への加入を申請中だ。松本社長は「リブラは迷走している」とする半面で、「否定するものではない。何も動きはなく、あえてアプリケーションを取り下げる必要もない」との姿勢を示した。

インタビューは24日に実施しました。

(和田崇彦 編集:田中志保)