[東京 24日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は24日、参院財政金融委員会で「通貨及び金融の調節に関する報告書」(半期報告)を説明した。現時点で金融政策の枠組みを全面的に見直す予定はないものの、見直しに向けて「将来、適切な時点で議論することはあり得る」と話した。このほど導入を決めた地域金融機関の経営効率化支援策についても、現在の金融政策のフレームワークに影響を与えるものではないとの見解を示した。

<市場はなお神経質、緩和の出口検討するタイミングではない>

先行きの経済・物価見通しは不確実性が高く、下振れリスクが大きいと指摘。当面は感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる方針だと述べた。

黒田総裁は質疑で、新型コロナの各地での拡大や公衆衛生上の措置により「景気回復は緩やかなものにとどまらざるを得ない」と指摘した。

物価に関連して、企業の値下げの動きが広範になっておらず「デフレに向かっている状況ではない」と指摘する一方、企業の設備投資やサービス消費の動向は注視していくと述べた。

日銀はコロナ対策で国債などの買い入れを積極化した。今年3月末時点で国債の保有比率は発行残高の44%、上場株式投信(ETF)は株式市場の時価総額の6%、不動産投信(REIT)はREIT市場の時価総額の5%となった。黒田総裁は「金融市場は全体として神経質な状況にある」と指摘。「金融緩和からの出口のタイミング、具体的な対応を検討する局面には至っていない」と述べた。

コロナ対策で財政出動が膨らんでいる。黒田総裁は「中長期的な国債の信認確保と、機動的な財政出動は矛盾しない」と述べた。

米連邦準備理事会(FRB)が年末でコロナ対応緊急融資を打ち切ることについては「FRBの金融緩和に向かっての態度には一切変更がない」と指摘した。

<地域金融機関の経営効率化支援策>

日銀は10日、地方銀行や信用金庫を対象に経営効率化を達成した場合にプラス0.1%の特別付利を実施する制度の導入を発表。黒田総裁は「地域金融機関の合併・統合を目的としたものではなく、経営基盤を強化するための努力をサポートしたい」と述べた。

黒田総裁は「金融政策ではなく、あくまでもプルーデンス政策として導入した。現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和のフレームワークに影響を与えるものではない」との見解も示した。

金融機関からは、経費率(OHR)の改善幅など特別付利の適用を受ける場合のハードルが高いとの指摘が出ている。衛藤公洋理事は「適用基準は相応に難易度が高いが、将来にわたって地域経済をしっかり支えていく観点から、この程度の経営基盤の強化を図っていくことが重要」と述べた。同理事によると、全ての地銀や信金に特別付利を付けると年間400億―500億円程度の支出になるとの試算になる。

<オンライン化や押印廃止を推進>

政府が進めている行政手続きの簡素化について、日銀もオンライン化や押印の廃止を進めて範を示すべきではないかとの指摘に対し、黒田総裁は「法令に基づく取り扱い手続きは、所管官庁からの指示や法令改正を受けてオンライン化や押印の廃止を進めていきたい。日本銀行と金融機関との間の手続きも、民間実務や法令によるところもある」と述べた。その上で「(日銀が)オンライン化や押印廃止を積極的に進めることで、金融業界の取り組みをサポートしていきたい。金融面でより国際標準に近づくということは日本の国際金融センターの地位向上にも資する」と語った。

*内容を追加して再送します。

(和田崇彦 杉山健太郎 編集:内田慎一、青山敦子)