[ニューヨーク 20日 ロイター] - 米株式市場は冬が近づく中、新型コロナウイルスワクチンの開発進展期待と全米各地での感染再拡大という現実がせめぎ合う見通しだ。

複数のアナリストは、米議会が追加経済対策を可決し、来年前半にワクチンが幅広く供給されれば、2021年の米株式相場は大幅上昇すると予想している。ただ、こうした進展を待つ間は、不安定な値動きになる可能性もあると警戒している。

投資家は過去数週間、新型コロナによる目先のリスクをおおむね見越し、モデルナやファイザーとビオンテックが開発するワクチンの高い有効性に関するニュースを手掛かりに、S&P総合500種は最高値を更新した。

それでも、新型コロナによる米国の死者が25万人を突破し、ニューヨーク市が公立学校の閉鎖を発表するなかS&P500が18日に1%超下落するなど、新型コロナは依然として株価の短期的なリスクとなっている。

投資家の間では、失業保険申請件数の増加など経済指標が景気回復失速の可能性を示唆し、追加経済対策の必要性を浮き彫りにしたとの見方もある。

23日からの週には、IHSマークイットの購買担当者景気指数(PMI)やコンファレンス・ボードの消費者信頼感指数が発表される。

コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのグローバル最高投資責任者、コリン・ムーア氏は「ワクチンは年内に部分的に供給が始まると予想しているが、それでもギャップが生じる」と語った。

新型コロナの感染状況にさらに悪化の兆しが見られれば、株価のボラティリティーが高まる恐れがある。投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(VIX指数)は米大統領選後に大きく低下したものの、その後は長期平均を上回る水準で横ばいとなっている。VIX先物も来年前半を通じて不安定な動きが続くとの見方が強いことを示唆している。

投資家は、追加経済対策を巡る問題がボラティリティーを高めていると指摘する。議会上院で民主、共和のどちらが決定権を握り、経済対策の規模などを左右するかは、ジョージア州で来年1月に行われる2議席の決選投票次第となる可能性がある。

ノイバーガー・バーマンのオプション担当シニアポートフォリオマネージャー、デレク・デベンズ氏は「2021年の大きなイベントリスクは、(追加経済対策が)議題から完全に外れる可能性だ」とし、「そうなれば市場にとってかなりネガティブなイベントになる」と述べた。

ただ投資家は総じて、米株価の下落は一時的になるとみている。新型コロナに関連した移動や経済活動の制限は今年春に導入された規制より限定的なものになる公算が大きいとの見方が背景にある。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの米州株式責任者、デービッド・レフコウィッツ氏は、トンネルの先に光が見えるだけで投資家の不安は和らいでいるとし、仮に追加経済対策が実現しなくても、ワクチンへの期待が株価への打撃を軽減する可能性があると指摘した。