[東京 10日 ロイター] - 金融市場は、新型コロナウイルスのワクチン開発に期待が高まる中、様相が大きく変化してきた。経済活動再開が早まるとの見方から、運輸株などが主導し日経平均が続伸する一方、巣ごもり需要減退懸念からマザーズが急落している。

10日の東京株式市場では、日経平均は一時前日比400円を超える上昇となり、29年ぶりに2万5000円台を回復。一方、マザーズ指数は一時5%を超える下落となり、同先物にサーキットブレーカーが発動された。

個別ではANAホールディングス<9202.T>や日本航空<9201.T>など空運株が上昇する一方、任天堂<7974.T>が下落。ワクチン開発で旅行需要が回復するとの期待が高まる半面で、ゲーム機といった巣ごもり需要は減少に向かうとの見方が背景だ。

経済活動が回復すれば、大規模な財政出動や金融緩和の必要性は低下するが、株式市場の懸念は今のところ小さい。「財政ファイナンスが懸念されるような状況よりも、ワクチンによる景気回復の方が素直に好感できる。また足元はまだコロナ感染が拡大しており、早期の政策転換は考えにくい」(三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏)という。

米10年債金利は足元で0.9%程度。9日の米債市場では一時0.975%と3月以来の高水準を付けたが、1.5%程度であったコロナ前の水準と比較すれば、まだ低い。米大統領選と議会選挙の最終決着はまだ先だが、低金利環境の継続期待とワクチン開発による景気回復期待が株高の原動力となっている。

一方、ドル/円<JPY=>は105円前半とドル高・円安方向に進んでおり、これまでのリスクオンとは異なる動きをみせている。市場では「これまでのドル安・円高のポジション巻き戻しではないか。ワクチンの有効期間など効果の見極めはこれからだ」(国内銀行)との声が出ている。

米製薬大手ファイザー<PFE.N>は9日、独バイオ医薬ベンチャーのビオンテック<BNTX.O>と共同開発する新型コロナウイルス感染症ワクチンの臨床試験(治験)で感染を防ぐ有効率が90%を超えたと発表した。[nL4N2HV3XP]

(伊賀大記)